ワイヤレスジャパン初日には基調講演が行われ、ビッグローブ執行役員常務の佐藤博氏は「MVNO/M2M/IoT市場における今後の動向と新たな事業機会や価値創出の可能性」をテーマに講演した。
ビッグローブ執行役員常務の佐藤博氏 |
近年、MVNO市場は堅調に成長しており、一般的な認知度も確実に高まっている。ある調査では、「格安スマホ」という言葉の認知率は男女とも約80%に上ったという。だが、MVNOの存在を知っていても、「安さに不安がある」「契約の手続きなどわからないことが多い」といった理由から、1年以内の購入意向は5%程度と非常に低い数字にとどまる。
こうした現状を踏まえ、佐藤氏はMVNO活性化に向けた課題として、①契約/手続きの利便性向上、②MVNOサービスの多様化の2点を挙げた。
①については、通信キャリアの顧客管理システムとの連携によりMNPの即時開通が可能となっているが、ビッグローブでは2016年後半に、利用者がアプリからの登録で開通処理などの各種手続きを行えるようにする予定だ。さらに将来的には、自動販売機でオプションまで含めて契約できるようになることも検討しているという。
また②については、利用者のニーズへの対応策として「HLR/HSSの開放」と「キャリアサービスの利用」を挙げた。
このうちHLR/HSSの開放は、従来から一部のMVNOが通信キャリアに強く求めている。これに対しビッグローブでは「事業者としては必要だが、デメリットもあり、十分な議論が必要」との立場を取る。佐藤氏は「HLR/HSSの開放を待たずに、工夫次第で利用者が求める価値を実現することはできる」と指摘した。
一例がモバイル網とWi-Fi網のシームレスな利用だ。
Wireless Broadband Alliance(WBA)とWi-Fi Allianceが共同で推進している次世代公衆Wi-Fi(NGH:Next Generation Hotspot)は、国際ローミングのように利用者が意識することなく各社の公衆無線LANサービスを使えるようになることを可能にするとして注目を集めているが、現状、MVNOはSIM認証を行えないことがNGHの実用化に向けたMVNO特有の課題とされる。
これに対し、ビッグローブはEAP-TTLS方式でSIM認証と同様の機能を実現するアプリ「オートコネクト」の提供により、モバイルデータ通信とWi-Fi通信の自動切り替えを実現している。
また、音声定額制サービスもHLR/HSSの開放により実現すると言われる機能の1つだが、ビッグローブでは1200円分(最大60分)の国内通話料が650円の定額で利用できる「BIGLOBEでんわ 通話パック60」などをすでに提供している。
佐藤氏は「(HLR/HSSを開放せずに)事業者の努力で解決できることも多い」と述べ、講演を締めくくった。