クラウド・仮想化対応で性能競う「ADC」最新ガイド

ネットワークにおいて多彩な役割を担うADC(Application Delivery Controller)に改めて注目が集まっている。高まるニーズに応えるため、各ベンダーは高パフォーマンス化とクラウド・仮想化対応を主軸に製品強化を進めている。

ネットワークを流れるトラフィックが急増するなか、トラフィックを複数のサーバーに振り分けてアプリケーションの利用環境を改善するADC(Application Delivery Controller)の重要性が増している。

ADCはネットワーク機器の中でも特に多機能化・高付加価値化が進んでいる製品ジャンルの1つだ。もともとはロードバランサと呼ばれていたが、レイヤ4-7負荷分散を基本として、通信に関連するさまざまな機能が追加されてきた。広域負荷分散(GSLB)、高速化、DDoS対策やWAF(Web Application Firewall)といった機能を集約し、アプリケーションの可用性向上、パフォーマンスの改善、BCP対策、セキュリティ対策と、複数の役割を担うソリューションだ。

高性能ADCが求められる理由

現在のネットワークの環境はADCに、さらなるパフォーマンスの向上と多機能化を求める状況にある。

Webアプリケーション/コンテンツの増加とクラウドの普及、そしてネットワークに常時接続するモバイル端末の増加によって、サーバーに対するトラフィック量は爆発的に伸びている。今後も、ビデオをはじめとするリッチコンテンツの広がりや、4G/5Gによる無線通信の広帯域化、M2M/IoTの進展によって、トラフィック量と接続デバイス数は加速度的に増加していく。

その負荷分散のために、処理性能向上へのニーズはますます高まっていくだろう。

特にユーザーからの期待が高いのが、SSLオフロード/アクセラレーション機能だ。SSL通信の暗号化/復号化処理をWebサーバーに代わってADCが行うことで、アプリケーションのパフォーマンス低下を防ぐ機能である。

これは従来からA DCの主要機能の1つだったが、SSL通信量が増加するに伴って、その処理性能の高さがますます重要視されるようになってきている。データセンター(DC)/クラウド事業者をメインターゲットにブロケードのソフトウェアADC「Brocade SteelApp Traffic Manager」(以下、SteelApp)を販売するSCSK・ITプロダクト&サービス事業本部IPネットワークテクノロジ部ソリューション第二課の前田俊氏は、「SSLオフロードの処理性能が非常に高く、競合他社の仮想ADCに対する大きな差別化ポイントになっている」と話す。

また、セキュリティ機能の強化も進んでいる。ADCは、レイヤ7のパケットを精査してトラフィックを管理・制御するための高度な機能を持つため、従来のファイアウォールやIPS/IDS(侵入検知/防止システム)では対応できないセキュリティ対策の機能を実装するのに適している。そこで、Webサーバーへのトラフィックを監視して、DDoS攻撃やWebアプリの脆弱性をついた攻撃を検知し防御する機能の搭載が進んできた。

月刊テレコミュニケーション2015年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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