――昨年末、総務省は、2020年代に向けた情報通信政策の方向性を打ち出しました。今年から、それを実行するフェーズに入ることになります。
鈴木 ほぼ1年間、「情報通信審議会2020-ICT基盤政策特別部会(2020特別部会)」で審議していただき、12月に報告書がまとまりました。
我が国は1985年の通信自由化以降、電気通信制度改革と民間事業者による不断の経営努力によって世界最高レベルのICT基盤を実現しました。今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機にICT基盤が我が国の飛躍発展に向けて重要な役割を果たすとともに、世界最高レベルであり続け、産業競争力強化や豊かで便利な暮らしを支えていくものでなくてはなりません。
そこで、2020特別部会で「世界最高レベルの情報通信基盤の更なる発展・普及に向けて」と題する答申をまとめていただきました。
――一般には、NTTの光コラボレーションやMVNO 支援、SIMロック解除推進、クーリングオフ問題などがクローズアップされました。
鈴木 それらも含めて、「ICT基盤の利活用による新事業、新サービスの創出」「公正競争の徹底を通じた世界最高水準のICT環境の実現」「便利で安心して利用できるICT環境の整備」「適切な行政運営の確保」の4本柱で、2020に向かう日本の情報通信政策の大きな方向性が明確に打ち出されました。
――今後、これを行政として推進していくにあたっては、情報通信国際戦略局の役割が大きいのではありませんか。
鈴木 そう考えています。情報通信国際戦略局には「国際」と「戦略」という2つの機能があり、日本のICT産業を国際的に展開していくことと、ICT政策をどうやって戦略的に推進していくかの2点に取り組んでいきます。
まず後者から説明しますと、総務省の政策の窓口が総合政策担当の情報通信国際戦略局なので、情報通信政策課が各局をまとめ、対外的には1つのものとして打ち出していくわけです。
政府は2013年に「日本再興戦略」を打ち出し、その一環を担うものとして、各省のIT政策を集約した「世界最先端IT国家創造宣言」を内閣のIT本部がまとめています。経産省、文科省、厚労省などがそれぞれITと産業、教育、医療などの課題をどう解決するか取り組んでいて、総務省は国としてのICT政策推進をリードしています。
――今回の2020特別部会の報告は、その骨格をなしているわけですね。
鈴木 そうです。日本経済を再興するために、情報通信基盤を発展させ続けるとともに、その基盤の上でICT利活用をどう進めるかというのが課題になります。
省内で言うと、総合通信基盤局が電波を割り当てて産業を育成するとか、光ファイバーのサービス卸制度やMVNO支援制度を作って通信市場の活性化を進めるとか、情報流通行政局が地デジ終了後にどう放送を発展させていくのかなど、それぞれで進めます。
お互いの関係の調整や、それぞれを活用した地域の活性化をどう進めるのかということが情報通信国際戦略局の仕事になりますので、ICTの利活用を課題としている情報流通行政局とともに、この政策を推進する責任があります。
――現在、取り組んでいる政策の重点は何ですか。
鈴木 まず、日本再興戦略の下で、日本経済を良くするためにどうするのかということです。例えば、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」においては、消滅する集落といわれている中で地方をどう活性化するのか、ICTの利活用による地域の活性化をテーマに、医療、教育、雇用、行政、農業など幅広い分野でのICTの一層の利用を進める策を推進しています。代表例として、「ふるさとテレワーク」「Lアラート(災害情報共有システム)」の普及などがあります。
我々は日本国中に光ファイバー網を張りめぐらし、携帯電話も3.9世代まで、どこでもつながるようにしたわけです。それを使って地域の地場産業や農業、林業、水産業をいかに活性化するかが重要です。
もう1つは、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を見据え、その成功に向けて取り組みながら、ICTを使って日本の社会の諸課題を解決することです。