居酒屋「かざくら」「くろきん」やリラクゼーションサロン「ZABOU」など、都内を中心に現在20店舗を運営しているゲイト。同社代表取締役の五月女(そうとめ)圭一氏は“型破り”な人物だ。
「商売を始めたのは、18歳のときに立ち上げた学習塾が最初です。大学に入学した4月の月末には、同級生に給料を支払っていました」
さらにさかのぼれば、小学生のときからメンコやビー玉を売ってお小遣いにしていたというから、まさに根っからの商売人。その経歴からは、類まれな決断力と行動力が察せられるが、それはICTの活用についても言えることだ。
日本でiPhoneの販売が開始されたのは2008年7月。「iPhone 3G」が最初だが、ゲイトはiPhone 3G時代からiPhoneを業務に活用し始めた。そして現在は、KDDIの提供する「iPhone 5s」を、一部のアルバイトを除く、ほとんどのスタッフに支給している。
ゲイト 代表取締役の五月女圭一氏 |
「店舗ビジネスの特徴は、連絡がすごく多いこと」
五月女氏によると、店舗ビジネスの特徴は、スタッフ間の連絡が非常に多いことだという。「特に店舗の立ち上げ時などは、皆で連絡を取り合うことが大変多くなります」
本社、各店舗、取引先といった別々の場所で働く関係者が、いかに緊密につながれるのか――。店舗ビジネスにおいて、コミュニケーションツールは大変重要な役割を担うが、iPhone導入前にはいくつもの課題があった。
まずは、高額な通話料だ。実はかつてゲイトでは、私物の携帯電話で業務連絡を行っていた。このため、例えば五月女氏の通話料は月額5~10万円に及ぶなど、高額な通話料の個人負担が課題となっていた。また、通話料が自前では、携帯電話で急いで連絡したほうが良いケースでもスタッフは躊躇してしまう。業務用の携帯電話を支給する必要に迫られていたのである。
ただし、携帯電話を会社で支給すれば、すべての課題を解決できるわけではなかった。電話というコミュニケーション手段そのものにも課題はあったからだ。
店舗で最優先すべきは、常に顧客だ。顧客を待たせて、社内のやりとりを優先させるわけにはいかない。つまり、電話をしても相手が出られないケースが多いのが、店舗の特徴だ。そして、手が空いた隙に電話を折り返しても、今度は向こうが出られない。
また、電話で話し合った内容を、別のスタッフに伝達したいときには、また同じ話を繰り返さなければならない点も課題として感じていたという。
それでは、メールならどうか。結論から言えば、「店舗とのコミュニケーションには向いていません」というのが五月女氏の評価だ。1つめの理由は、文章が長くなりがちで、作成に時間がかかること。「メール≒手紙」と同氏は表現する。もう1つは、メールでのやりとりは、スレッドがだんだん枝分かれしていき、「“地獄”のやりとりになってしまう」からだという。
さらに同社では、日報が大切な情報共有手段となっていたが、その編集作業にかかる手間も課題となっていた。
こうした課題を解決できる手段を探すなか、ゲイト社内で浮上してきたキーワードが、「モバイルデバイス」「グループチャット」「同時編集可能な表計算ソフト」「クラウドであること」の4つだった。
そしてゲイトは、iPhone、Google Apps、Skypeなどを活用し、コミュニケーション環境を革新していく。