モバイルデータ通信を主力としてきたイー・アクセスが、企業を対象としたスマートフォンの販売に本腰を入れてきている。
企業向け営業を担当する法人営業第一部部長の岡川大三氏は、「夏以降、スマートフォンの販売が大きく伸び、法人部門でも月販の2 割を占めるまでになっている。年度末には、これを5割に持っていきたい」と語る。データ通信回線の販売実績にスマホ販売を上乗せし、年度内に総販売数を倍増させることが目標だ。
人口カバー率が99%超に
このスマホ販売の伸びを牽引しているのが、2013年3月に発売されたイー・アクセス初のLTE 対応スマホ「STREAM X(ストリーム エックス)」だ。7月にイー・アクセスのスマホで初めてソフトバンクの3G網へのローミングを実現し、サービスエリアを拡大したことで販売数を伸ばした。
STREAM X(GL07S)は、4.7インチ液晶ディスプレイ(720×1280ピクセル)と4コアのCPU(HiSilicon K3V2)を搭載したAndroid 4.1スマートフォン。150Mbpsの高速通信にも対応する。ファーウェイ製 |
イー・アクセスは、移動通信事業に参入した翌年の2008年(当時はイー・モバイル)にWindows Mobile端末を、2011年にはAndroid端末を手掛けるなど、スマートフォンに積極的に取り組んできた。しかし、モバイルデータ通信を主力とする同社のサービスエリアは人口カバー率95%程度で、電話としては使い難いことから企業の利用は限定的なものにとどまっていた。
しかし今回のローミングの実現により、STREAM Xはソフトバンクの人口カバー率99%超の2.1GHz帯3G網でも使えるようになり、商品力を大きく向上させた。ソフトバンクが広域エリアの構築に用いている900MHz帯(プラチナバンド)には対応していないため、山間部などに利用できない地区が残るが、大半の企業にとっては十分に実用的なエリアが確保されたことになる。
他方、ソフトバンクもイー・アクセスのLTE網をiPhoneで活用することで都心部での通信品質を向上させており、ソフトバンクによるイー・アクセスの買収はネットワークの相互補完で大きなシナジー効果を生んでいる。
エリアに加え、STREAM Xで好評を博しているのが、月額3880円(期間拘束割引などへの加入が条件)という格安の料金設定だ。これには5GBまでのデータ通信料金が含まれており、テザリングの利用も可能だ。月額5000~6000円が必要となる他社のスマホと比べて大幅に安い料金で使えるのだ。
この月額3880円という料金は、イー・アクセスが以前からスマホ向けに提供しているもので、データ端末と同水準。ソフトバンクとのローミングでエリアが広がったにもかかわらず、料金を据え置いたことで、コスト競争力を高めた。
岡川氏は「携帯電話に比べて通信コストがかさむことが、スマホの企業導入が進まない大きな要因となっているが、STREAM Xでは既存の携帯電話とあまり変わらないコストで提案できる」と話す。STREAM Xを、企業にスマートフォンを普及させる突破口として活用しているのだ。