ミリ波利用促進へのドコモの取り組み【後編】―― 価値を顕在化させる3要素

5Gの展開が一定の段階に到達した現在、ネットワークに求められる課題は「いかに高速化するか」に加え「いかに混雑環境で品質を維持するか」が重要なポイントとなってきている。こうした状況で、ミリ波は単なる高速通信手段ではなく、ネットワーク全体の容量を拡張するための重要なレイヤーとして再評価されつつある。一方で、実トラフィックに占めるミリ波の割合は限定的であり、潜在能力を十分に活かしきれていない。前回に続き、このギャップはどのような設計によって解消し得るのかについて、実装視点から整理する。

【連載】ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験- の目次はこちら

【前編からの続き】

さらに、ステージ上ではME:Iのメンバーによる「ミリ波講座」も実施され、難しく見えがちなミリ波の説明をエンターテインメントの文脈に載せて伝える工夫が行われた。技術用語としてのミリ波をそのまま説明するのではなく、「推し活」「推しカメラ」「限定動画」といった来場者の関心と接続したことにより、理解と利用動機を同時に高める構成となった。

IGアリーナステージで行われたミリ波講座

IGアリーナステージで行われたミリ波講座

SNS上でも、Galaxy×ME:I関連の投稿は約3.6万件に達し、TGC全体では20.7万件規模の投稿が確認された。こうした拡散は、単にイベント演出が注目された結果にとどまらず、ブース体験やステージ演出を通じて「ミリ波で速く受け取れる」「高画質な推しカメラ動画をすぐ楽しめる」といった体験価値が話題化したことを示している。

ミリ波活用の3つの価値を示す

この取り組みは、ミリ波活用の観点から見ると、3つの意味を持つ。

第一に、ミリ波の速度差をユーザーの待ち時間の差として可視化したこと。第二に、イベント限定コンテンツと結びつけることで、利用する必然性をつくったこと。第三に、体験を通じてミリ波対応端末の価値を自然に認識させたことである。これは、ミリ波の普及において必要となる「ネットワーク整備」「ユースケース設計」「端末訴求」を一体化したモデルといえる。

特に重要なのは、ミリ波を“技術として説明する”のではなく、“体験として理解してもらう”構造が成立していた点である。高リテラシー層に対しては容量レイヤやトラフィック制御としての意義を説明できる一方、一般来場者には待ち時間の短縮や限定コンテンツの即時取得として価値が伝わる。技術と体験の双方で成立していることが、この事例を象徴的なものにしている。

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木原茉莉子(きはら・まりこ)

NTTドコモ ネットワーク部 電波企画室 電波担当課長。2006年入社。基地局置局設計、展開計画、エリア品質業務等を経て現職。現在は電波利用制度、ミリ波・ローカル5Gの活用促進、次世代移動通信に向けた周波数活用戦略の検討に従事

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