1. はじめに
郵政民営化についての検証を行っている郵政民営化委員会では、本年2月9日から10日にかけて、郵便局でのオンライン診療とオンライン服薬指導の実態把握のため、山口県周南市・柳井市を現地視察した。
これは、地域医療を確保するために郵便局の局舎スペースと、スタッフ、決済機能(ゆうちょ銀行)、集配機能を活用するもので、地域住民の好評を得ているのと同時に、今後に向けての課題も明らかになってきている。本稿では、郵便局のオンライン診療のそもそもの発端から、現在の取組までを振り返り、その更なる発展に向けての考察を行う。
2. オンライン診療を郵便局で
現在、多くの地域において、高齢化が進み、医療資源とサービス提供人材の不足が進んでいる。その中で、住民が安心して暮らしていくために必要な医療サービスを享受できる体制の確保が重要な課題となっている。
その課題の解決に向けて、診療所が遠くにしかない地域でも、身近な場所で診療が受けられるためのツールとして、オンライン診療がある。
オンライン診療が「解禁」されたのは、平成27年8月の厚生労働省の通知によってだった。そして、その後の平成30年度・令和4年度の診療報酬改定などを通じて、徐々にオンライン診療の活用が模索されてきた。
オンライン診療の更なる活用に向けた基本方針の策定が、令和3・4年の「規制改革実施計画」(令和3年6月18日・令和4 年6月7日閣議決定)及び「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日閣議決定)において進められることとなり、その中で、オンライン診療を行う場所の確保についての検討が進められた。
そういった機運の中で、令和4年9月、自見英子参議院議員から提起いただき、オンライン診療の活用に向けた新しい取組として、地域にある郵便局の活用について、関係者間の話し合いを行った。当時総務省から参加した筆者と郵政行政部企画課の松田昇剛課長は、日本医師会、厚生労働省、日本郵便といった関係者の熱意と建設的で有益な意見をいただき、実証実験として郵便局でのオンライン診療を始めることの検討を約束した。従来からの診療所や患者居宅等ではないところでオンライン診療を行うというのは、前例もなく、制度的にも難しかった。そこで、厚生労働省に、制度面での手当について検討をいただくべく、話し合いを行ってきた。
厚生労働省では、その社会保障審議会において、「遠隔医療の更なる活用について」の審議が進められた。同審議会の同年12月6日の医療部会では、へき地等で、オンライン診療のための医師が常駐しない診療所の郵便局等への設定について、場所の選定に都道府県が関与することなどとした骨子が示され、審議が行われた。
そして、翌5年5月、厚生労働省医政局は、総務課長通知の「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」(令和5年5月18日医政総発0518第1号)を発出して、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を認める手続きを定めるに到った(翌6年1月には、これを継承・発展させた「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」(令和6年1月16日医政総発0116 第2号)が発出され、適用されている)。
こういった社会保障審議会での審議も踏まえ、財務省の理解をいただき、総務省では、「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」の令和5年度予算1億2千万円の取組の一環として、郵便局のオンライン診療を実現することとなった。
3. 七尾市南大呑郵便局での実証事業
こうして実現した令和5年度の実証事業では、石川県七尾市の南大呑(みなみおおのみ)郵便局内に個室ブースを設置し、実証協力医療機関であるねがみみらいクリニックとインターネット回線で接続し、情報通信機器を通じたリアルタイムでの診療が毎週水曜日と金曜日、令和5年11月15日から同6年2月16日まで行われた(図表1)。
図表1 南大呑郵便局でのオンライン診療
ここでは、ねがみみらいクリニックで診療をしている患者のうち、状態が安定しているが継続診療が必要な慢性疾患患者から実証協力患者が決められた。処方箋がある患者の方には、診療後に実証協力薬局とインターネット回線で接続し、オンライン服薬指導も提供された。
この実証事業の結果からは、オンライン診療のメリットと、その実施に当たっての課題との双方が明らかになっている。
オンライン診療のメリットとしては、患者の72.7%の方が通院時間の節約を、36.4%の方が交通費の節約を挙げており、通院負担の軽減にメリットがあることが分かる。また、オンライン診療システムのログインやオンライン診療開始までの操作は郵便局社員がサポートして行い、受診後のオンライン診療の満足度については、「大変満足した」または「満足した」と回答した方が81.8%あった。
こういったメリットの一方で、金銭面での患者の負担には、課題も見えてきた。
患者の支払いは、郵便局窓口で払込票を使用して行うこととされた。払込手数料が生じることについて、300円未満であれば許容できるとする回答が72.8%あったが、これは、オンライン診療が無かった場合の交通費の負担額との見合いになるものだろう。
他方で、オンライン服薬指導で薬の送料がかかることについては、そもそも「送料がかかるのであれば利用しない」という回答が36.4%あった。直接薬局で支払う場合には生じない金銭的負担であるため、そこの抵抗感があったものだろう。














