郵便局×オンライン診療の現在地 地域医療インフラとしての新たな役割と成果

医療資源が不足する地域において、郵便局を拠点としたオンライン診療の取組が広がっている。各地での実証と実装の動向から、その意義と今後の展望を整理する。

4. 周南市高瀬郵便局での実装

日本郵便では、この七尾市での取組の後、更なる実証事業と社会実装の両面で、都道府県、市町村と連携して、オンライン診療の取組を拡大している(図表2、3)。

図表2 郵便局のオンライン診療の各主体の連携

図表2 郵便局のオンライン診療の各主体の連携

図表3 郵便局のオンライン診療・服薬指導取組一覧

図表3 郵便局のオンライン診療・服薬指導取組一覧

冒頭で紹介した郵政民営化委員会(図表4)の現地視察では、実装が行われた2つの郵便局を訪問した。

図表4 郵政民営化委員会

図表4 郵政民営化委員会

まず、周南市の中山間部にある高瀬郵便局(福谷直美局長)を訪ねた(写真1)。周南市の和田地区は、平成28年から医師のいない地区となっており、郵便局内への巡回診療所の設置を日本郵便から周南市に提案して実現したとのことで、ここで全国で初めての郵便局でのオンライン診療・服薬指導の社会実装も令和6年7月16日に実現した。

写真1 高瀬郵便局

実装化を推進された日本郵便の福田信一郎地区統括局長によれば、コロナ禍の中で、院内感染を回避する方途として郵便局の活用を考えたのが契機ということで、局舎内に設けた個室の診療ブースは、オンライン上で医師が患者を正しく見えるように壁の色合い、電球の色等を工夫したという。

郵政民営化委員会では、オンライン診療のデモンストレーションを拝見し、長沼恵滋医師から、診療の実地の話を伺った。

周南市の藤井律子市長、末永和宏健康医療部部長他のスタッフの方々からは、中山間部の医療の確保について話を伺った。七尾市での実証でと同様に、診療費の収納、薬の郵送の対応がここでもなされたが、七尾市で課題となった患者の費用負担については、厚生労働省の補助金を活用して、薬の郵送費を補填しているとのことだった。

5. 柳井市平郡郵便局での実装

柳井市の離島である平郡島(写真2)の平郡郵便局(棟居正樹局長)では、令和6年9月17日にオンライン診療・服薬指導の実証事業が始められ、同年12月11日にそれが一旦終了した後に、7年10月からオンライン服薬指導が実装されている。オンライン診療は未実施だが、8年に開始が計画されている(写真3)。

写真2 平郡

写真3 平郡郵便局

郵政民営化委員会では、オンライン服薬指導のデモンストレーションを拝見し、本島から通われている平郡診療所の増井将樹医師に話を伺った。また、離島の医療の確保について、柳井市の井原健太郎市長、益田昌明健康福祉部部長他のスタッフの方々と意見交換を行った。

平郡島には、週に一度、周東総合病院の増井医師が本土からフェリーで来て、東地区の平郡診療所で診察を行った後一泊し、翌日は西地区の平郡診療所西出張診療所にて診察し、またフェリーで本土に戻るという方法で診療が行われている。

平郡診療所での診察で処方箋が出た患者は、そこから徒歩2分ほどの距離の平郡郵便局でオンライン服薬指導を受け、薬は郵送で受け取っている。

オンライン服薬指導のメリットとしては、院外処方となることで、薬の選択の幅が広がったという話を伺った。

また、今後オンライン診療を実施するメリットとして、増井医師からは、島外からのオンライン診療と島内での対面診療を別の日時に行うことで、対面診療に時間を長く割くことができるようになるという話を伺うことができた。

診療費の振込手数料、薬の郵送費は、柳井市の負担により患者の追加負担が生じないような配慮がなされていた。

藤野克(ふじの・まさる)

内閣審議官 内閣官房郵政民営化推進室長。博士(学術)。総務省郵政行政部長、大臣官房総括審議官などを経て現職。著書に『情報通信ルールの国際競争 日米のFTA 戦略』(早稲田大学学術研究書出版奨励賞)、『インターネットに自由はあるか 米国ICT政策からの警鐘』2012年度大川出版賞)、『電気通信事業法逐条解説再訂増補版』(共編著)がある。

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