11bcによる「拡張Wi-Fi放送」の可能性 インターネット接続なしでコンテンツ配信

2028年頃の実用化が見込まれるIEEE802.11bcは、Wi-Fiによる高信頼なブロードキャスト通信を規定したものだ。幅広い用途が想定される同技術について、Extreme Networksに聞いた。

米Extreme Networks CTO オフィス ワイヤレスネットワーキング担当ディレクター デビッド・コールマン氏

——Enhanced Broadcast Services(拡張ブロードキャスト通信:EBCS)を規定したIEEE802.11bcについて、Wireless Broadband Alliance(WBA)が普及に向けた活動を始めています。EBCSの特徴を教えてください。

コールマン EBCSは11bc標準に基づくWi-Fiコンテンツ配信技術です。Wi-Fiアクセスポイント(AP)の範囲内にあるデバイスに対して、未接続の端末も含めてインターネット接続なしでコンテンツを配信することができます。

APからの電波が届く範囲内におりさえすれば、APへの接続の有無を問わずコンテンツを受け取れます。

EBCSのユースケースとは

——Wi-Fiにはこれまでもブロードキャスト(11p)やマルチキャスト通信の仕組みがありました。それとの違いは。

コールマン レガシーなブロードキャスト、マルチキャスト技術は低速データレートで動作しており、多くのデバイスに同時配信しようとすると全体のスピードが大きく下がってしまいます。

対して、新技術のEBCSは、Wi-Fi 6や7で採用している高変調符号化方式(MCS)レートを使用した高スループットでの配信が可能です。そのため、高画質な短い動画クリップなどの配信に適しています。

例えばスタジアムであれば、観客のスマートフォンへリアルタイムスコアや統計情報を配信したり、インスタントリプレイの映像クリップを届ける、ジャージの半額セールを行うグッズ店のターゲット広告をプッシュ配信するといった使い方ができます(図表)。また、地震などの災害が発生した際の緊急警報にも活用できるでしょう。

図表 複数のEBCSストリームを使用する際のイメージ図表 複数のEBCSストリームを使用する際のイメージ

EBCSはAPに接続していない幅広いデバイスへ配信できるので、政府や自治体の広報、安全確保のための緊急通信にも使えます。先述のターゲット広告は、スタジアムに限らず一般的な小売店でももちろん活用できます。

また、コンテンツ/情報配信だけでなく、未接続のデバイスに対してWi-Fiプロファイルやイベント等の公式アプリをプッシュ配信してネットワークへの接続を促すといった使い方も可能です。

——未接続の端末に対して、どのようにコンテンツを配信するのですか。技術的な仕組みを教えてください。

コールマン ケーブルテレビのチャンネル契約をイメージしてください。EBCSは複数のコンテンツストリーム、つまりチャンネルを配信し、ユーザーはその中から受信したいものを購読するかたちになります。

技術的な実装について説明すると、EBCSはレイヤー2(MACレイヤー)で動作します。緊急警報や広告配信、インスタントビデオクリップといった用途・配信内容に応じた複数のチャンネルがあり、その識別子として「コンテンツMACアドレス」を用います。

APはコンテンツごとに、購読・加入しているデバイスに向けてブロードキャスト配信を行い、ユーザーのデバイスはコンテンツMACアドレスで識別し、購読するコンテンツを受信します。

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デビッド・コールマン氏

多くの企業、米軍、連邦政府・州政府機関向けにWi-Fiコンサルティングを提供。2020 年には、Wi-Fi業界において多大な貢献をした個人や企業に贈られるWi-Fi Lifetime Achievement Awardを受賞した

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