空室が増える都心ビルをデータセンターに転換 MiTASUNが仕掛ける都市型DC構想

大林組の子会社MiTASUNが都市型DC事業に乗り出している。都心の中規模ビルを小規模DCに転換し、光ファイバーで直結してDC群を構築する構想「HUBWAY」の狙いを聞いた。

データセンター(DC)業界は現在、大きな転換点にある。AIやクラウドサービスの急拡大を背景に需要は急増しており、総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、国内市場規模は2023年の約3兆円から2028年には約5兆円へ拡大する見通しだ。一方で、供給側には構造的な制約がある。大規模DCの建設には電力確保に数年単位のリードタイムがかかり、用地取得も難航している。DCの7割以上が東京圏に集中するなか、都心部での新設はハードルが高い。

こうした課題に対し、大手ゼネコン大林組の100%子会社であるMiTASUN(ミタサン)は、全く異なるアプローチで挑んでいる。大規模オフィスビルの大量供給で空室化が進む都心の中規模ビルをDCに改修・建て替えし、それらを光ファイバーで直結して1つのDC群として運用する「HUBWAY(ハブウェイ)」構想だ。ゼネコンがなぜDCの運営側に回ったのか。まずはその経緯から説明する。

施工者から発注者への布石

MiTASUN設立に至る布石は10年前に遡る。2016年頃、AWSやマイクロソフトといった外資系クラウド事業者が日本に本格進出し、DC建設の発注者の中心が国内メーカー系から外資系へと移り始めた。この変化のなかで大林組は大型案件の受注を重ね、社内にDC設計のノウハウが蓄積されていった。

MiTASUN 代表取締役社長 綱脇彰則氏

MiTASUN 代表取締役社長 綱脇彰則氏

MiTASUN代表取締役社長の綱脇彰則氏は当時、DC案件の技術営業に携わるなかで、ある着想を得た。「受注するだけでなく、発注側にも回った方がいいのではないか」。DCを自ら運営すれば、ユーザーが何を求めているかを直接把握でき、その知見を施工提案にも活かせる。しかも建設工事の発注先は大林組に限定せず、経済合理性によっては他のゼネコンに発注してもいい。大林組のトップもこのアイデアを承諾し、DCの「施工で稼ぐ」だけでなく「運営でも稼ぐ」ためのプロジェクトがスタートした。

2016年から市場調査や事業化企画、社外協力体制の構築、研究開発に着手。2023年にはこのアイデアの特許出願や計画地取得を進め、約10年の助走を経て2024年11月に会社を設立した(図表1)。その間、通信事業者や金融機関、先行DC事業者の幹部、大学教授など社外から多くの助言・支援を得た。MiTASUNの社員は、大林組で建築、設備、不動産等を経験してきた出向者が中心だが、通信事業者出身のメンバーもいるという。

図表1 MiTASUN の事業化までの道筋

図表1 MiTASUN の事業化までの道筋

建物よりネットワークが重要

HUBWAYの最大の特徴は、DC間を専用光ファイバーで直結する構想にある。綱脇氏は「既存ビルの建て替えや改修という建物の話ばかりに目が行きがちだが、本質はネットワークの方だ」と強調する。「現在のDC間接続は局舎や中継設備を経由するケースが多いが、ビル間を直結すれば、経路を最短化できる」。半径数km内に分散した小規模DCを、あたかも1棟の大規模DCのように機能させることが狙いだ。「光ファイバーで5〜8kmの距離であれば、遅延は数十μs(マイクロ秒)程度。アプリケーションから見れば、数十μs程度のネットワーク遅延であれば誤差の範囲で、実用上は同一施設内にあるのと遜色ない」と綱脇氏は説明する。

構想では、品川区や中央区などを重点エリアとし、半径約5km圏ごとにハブとなるDCを設置。その周囲に複数の小規模DCを衛星状に配置して1つのクラスター(小規模DCの集合体)を形成し、さらにクラスター間もハブ同士で接続する計画だ(図表2)。

図表2 都市型データセンター群の構築イメージ

図表2 都市型データセンター群の構築イメージ

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