京大原田教授「ワイヤレスエミュレータを汎用的な仕組みに」 NICTらがシンポジウム

無線機の検証を仮想空間で行える「ワイヤレスエミュレータ」が、来る6G時代を支える基盤技術として注目されている。NICTらはシンポジウムを開催し、京都大学の原田博司教授がその意義を語るとともに、研究者らが最新の研究成果を報告した。

情報通信研究機構(NICT)とワイヤレスエミュレータ利活用社会推進フォーラムは2026年3月25日、「令和7年度 ワイヤレスエミュレータ利活用シンポジウム」を開催した。

(左から)NTTドコモ 6Gテック部 無線アクセス技術担当・無線デバイス技術担当 担当部長 須山聡氏、SOKEN 研究2部 23研究室 櫻井一正氏。京都大学大学院 情報学研究科 教授 原田博司氏、KDDI総合研究所 無線部門 シニアエキスパート林高弘氏、シャープ 研究開発本部 通信・映像標準技術研究所 第二研究室 室長 横枕一成氏、NICT ソーシャルイノベーションユニット 主幹研究員 児島史秀氏

(左から)NTTドコモ 6Gテック部 無線アクセス技術担当・無線デバイス技術担当 担当部長 須山聡氏、SOKEN 研究2部 23研究室 櫻井一正氏、京都大学大学院 情報学研究科 教授 原田博司氏、KDDI総合研究所 無線部門 シニアエキスパート林高弘氏、シャープ 研究開発本部 通信・映像標準技術研究所 第二研究室 室長 横枕一成氏、NICT ソーシャルイノベーションユニット 主幹研究員 児島史秀氏

Beyond 5G/6GやIoT、自動運転などの進展により、無線システムの適用領域は一段と広がり、通信量の増大や電波干渉への対応、複雑な利用環境を前提とした検証の重要性が増している。一方で、こうした新しい技術や装置を実フィールドや電波暗室だけで評価するには、物理的な制約やコストの面で限界がある。

そこで期待されているのが、仮想空間上で電波システムを高精度に模擬する「ワイヤレスエミュレータ」だ。多数の無線機や複雑な環境条件を再現しながら、大規模かつ高度な検証を行う基盤として開発が進められてきた。

ワイヤレスエミュレータの概要

ワイヤレスエミュレータの概要

NICTは、総務省委託の研究開発プロジェクト「ミリ波帯等における移動通信システムの展開に関する研究開発」のもと、ワイヤレスエミュレータの開発を2024年から2027年度までの4カ年計画で進めている。今回のシンポジウムは、このプロジェクトの成果を対外的に発表する場として開かれた。

“研究者や事業者が利用しやすいエミュレータを” 原田氏

同事業の研究開発プログラムディレクターを務める、京都大学 大学院 情報学研究科 教授の原田博司氏は、ワイヤレスエミュレータを整備する意義を説明するなかで、エミュレータとシミュレータの違いを強調した。原田氏によれば、シミュレータが無線機の機能の一部をモデル化して再現するのに対し、エミュレータは実機での動作を前提としたソフトウェアを用い、実際の地理空間を3次元で取り込みながら、できるだけリアルタイムに近い形で動作させるシステムを指す。

エミュレータとシミュレータの違い

エミュレータの長所は、複雑な実環境をデジタル空間上に模擬的に構築できることだけでない。原田氏は、今回のプロジェクトで取り組むシステムのポイントを「仮想無線機と実際の無線機がサイバーフィジカル空間で連携動作ができること」と語った。工場や高速道路など、無線機を利用するシナリオを入力するとそれに応じた電波伝搬モデルが生成され、その仮想空間内で検証できる。さらに、仮想空間内で動かしたソフトウェアを実機検証でそのまま利用できるのも利点だという。

そのうえで原田氏は、「NICTのような公共研究機関がワイヤレスエミュレータを保有する意義は大きい」と述べた。通信事業者などが個別にデジタルツインを持つこと自体はあり得るが、重要なのは、広く利用できるパブリックなデータや基盤を整えることだという。市販・公開された3D地図データなどを活用しつつ、できるだけ汎用的な仕組みとして構築し、研究者や事業者が利用しやすい共通基盤として整備することが必要だとした。

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