5Gなどの無線通信を活用した産業DXが進展するなか、ワイヤレス人材の育成・確保が喫緊の課題となっている。三菱総合研究所(MRI)の試算によると、2022年に約5.2万人だった「5Gワイヤレス人材」(通信業界で5Gなどのネットワーク整備・運用に携わる人材)は、2027年には約6.2~7.2万人が必要となる見通しだ。
また、製造業や自治体など、5Gを活用する側の「5G利用人材」についても、新たに約1.6万人が必要になるとMRIは見る。つまり、2027年までに新たに確保すべきワイヤレス人材は、計2.6~3.6万人にのぼる(図表1)。Beyond 5G/6Gの実用化が見込まれている2030年以降も、人材需要の高まりは続いていくと考えられる。
図表1 ワイヤレス人材をめぐる現状と今後の動向

そうした状況の中、「新卒が“安定志向”に回帰しつつある。企業のブランド力や安定性が就職先を選ぶ際の重要なポイントの1つになってきた」と語るのは、アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 人的資本経営 戦略ユニット長の久保田勇輝氏だ。
携帯電話事業者のような大手企業は、高待遇や知名度を武器に、一定水準以上の学生を安定的に確保できている一方で、中堅・中小企業では自社の魅力を十分に訴求しきれず、採用活動が思うように進んでいないケースも少なくないという。
レバテック ITリクルーティング事業部 ハイクラスグループの芦野成則氏は、「ジュニア・ミドルジュニアといったポテンシャル層の採用は一定程度進んでいるものの、トップクラスのシニア人材の確保に苦戦している企業が多い」と話す。こうした課題は、通信事業者や大手ICTベンダーにとっても無縁ではいられないだろう。

レバテック ITリクルーティング事業部 ハイクラスグループ 芦野成則氏
優秀な人材の確保が難化している理由の1つが、デジタル技術の急速な進化だ。クラウドやAI、IoT、セキュリティなどの先端技術は目まぐるしいスピードで進化を遂げており、これらの技術に精通した人材の確保や社内育成が十分に進んでいないのが現状である。
国内ICT企業からGAFAへの人材流出が話題になったように、より良い待遇を求めて国内ベンダーから外資企業へ転職する動きも少なからず見られる。また、ネットワークエンジニアなどの専門性の高い職種では、高齢化も進んでいる。
こうした環境下でICT企業に求められるのは、「採用」に依存した人材戦略からの転換だ。優秀なテック人材の獲得競争が激化するなか、外部から人材を引き入れるだけでなく、社内人材を計画的に育成していくことが重要になる。そのうえで、自社の魅力を再定義し、社外の人材を惹きつけるブランディング戦略を設計・実行できるかどうかが今後のカギを握るだろう。











