「2025年度末までに97%」という政府目標が掲げられた5G人口カバー率は、2023年度末に98.1%に達し、面的なエリア整備は計画を前倒しで進展してきた。そこで2026年に問われるのは、5Gの「質」と「マネタイズ」だ。つまり、“いつでもどこでも”つながる通信品質を提供しつつ、5Gでいかに収益化するかが、通信事業者にとっての大きな課題となる。
そのカギを握るのが、「5G SA」(Stand Alone)である。通信事業者各社は、既存のLTE設備を活用した迅速なエリア展開を進めるため、LTEコアネットワーク(EPC)と5G基地局で構成されたNSA(Non Stand Alone)方式で5Gをスタートさせた。
しかし、5G本来の性能を引き出し、収益機会をさらに広げていくには、5Gコアと5G基地局で構成された5G SAへの移行が不可欠となる。「通信事業者4社の取り組み状況や目標を見ると、2026年は5G SAが本格的に広がっていく1年になるだろう」と三菱総合研究所(MRI) モビリティ・通信事業本部 ICTインフラ戦略グループリーダーの伊藤陽介氏は予測する。

三菱総合研究所 モビリティ・通信政策本部 ICTインフラ戦略グループリーダー(XGモバイル推進フォーラム(XGMF)ファシリテータ) 伊藤陽介氏
5G SAをいち早く展開してきたKDDIは、2025年度第1四半期(1Q)時点で50%だった5G SA人口カバー率を、4Qまでに90%以上へ引き上げると宣言(図表1)。東名阪を中心に5G SAエリアを展開してきたソフトバンクも、2025年には札幌や福岡、仙台などにもそのエリアを広げている。楽天モバイルも、2026年の5G SA本格展開に向け、シスコやノキアらの海外ベンダーと戦略的協業を締結した。
図表1 KDDIの5G SA計画

放送用途で活用進むスライシング
5Gマネタイズの切り札として期待されているのが、ネットワークスライシングだ。1つの物理的なネットワークを複数の仮想的なネットワーク(スライス)に分割する技術で、用途ごとに必要な通信品質を確保・保証できる点が大きな特徴である。
なかでも立ち上がりが早いのが放送用途だ。すでにKDDIが放送事業者向けスライシングソリューションを商用化し、TBSテレビが2025年11月に国立競技場で行われたサッカー日本代表戦の映像中継に活用した。
スポーツ・イベント会場からの中継映像を、一般来場者向けの通信とは分離した専用スライスで伝送することで、スタジアムのような混雑環境でも、上り帯域を確保した安定的かつ低遅延な映像伝送が可能になる。詳細は未定だが、NTTドコモも2026年以降にスライシングを商用サービス化する予定で、スライシング活用の動きはさらに広がりそうだ。
スライシングとの親和性が高いもう1つの分野が、ロボティクス分野だ。「フィジカルAIの世界観がさらに進展してくると、専用帯域を確保したいというニーズが必ず顕在化する」とPwCコンサルティング ディレクターの内野幸治氏は語る。工場や物流倉庫、港湾などで稼働するAGV(自動搬送ロボット)や自動運転など、常に低遅延・高信頼の通信が求められるユースケースでは、スライシングが欠かせない技術となるだろう。











