昨年3月の東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)の観点から、企業のICT利活用におけるクラウドの重要性が高まっている。このことは、PBX/ビジネスホン市場にも無視できないほどの大きな影響を与え始めている。
2006年頃から、データセンター内に設置したIP-PBXからネットワークを介してオフィスに必要な電話機能(外線発着信、内線・保留転送など)を提供する、いわゆる「クラウドPBX」サービスが登場した。この草分け的な存在として知られているのがリンクの「BIZTEL」、ブラステルの「Basix」といったサービスだ。
クラウドPBXサービスが提供する機能の例として、図表1にブラステルの「Basix」の基本機能を示した。一般的なPBX/ビジネスホンが備える機能のうち、使用頻度の高いものはほぼカバーしている。Basix以外のサービスも基本機能については大差なく、オプション機能の提供によって差別化を図っている。例えばBasixの場合、カンファレンスコール(電話会議)やボイスメール、公私区分などの機能が目を引く。
図表1 クラウドPBXサービスの基本機能例(ブラステルの「Basix」の場合) |
各社ともこれまで堅実に実績を積み重ねているが、クラウドPBXビジネスが飛躍するには、さまざまな課題がある。主に中堅・中小クラスをターゲットとしていることもあり、ユーザーに対してクラウド型のメリットを訴求することは難しく、また信頼性への不安を払拭しきれなかった。加えて、PBX/ビジネスホンを販売する通信系ディーラーが既存ビジネスへの影響を恐れてその取り扱いに慎重になっていることもあり、これまでは「市場」と呼べるほどの規模には育っていない。
だが、昨年以降、企業のクラウドへの認識は大きく変わった。初期投資の抑制や迅速な導入といったメリットが広く認識されるとともに、堅牢なデータセンター内の設備を利用することでBCP対策にもつながることが広く理解され始めたのである。
クラウドPBXにとって、これは間違いなく追い風だ。ベンダー側はこの機に、市場を一気に拡大させようと、新たな施策を打ち出している。