5Gのマネタイズ(収益化)は世界中の通信事業者にとって共通する課題だ。
BSS/OSSソリューションを提供するコマーチ・ジャパン Senior Telco Consultantの小出泰雄氏は、サービスの構築に係る手作業の多さが5Gのマネタイズを阻んでいると指摘する。
コマーチ・ジャパン Senior Telco Consultant 小出泰雄氏
5Gのポテンシャルを活かすサービスの構築を自動化できれば、コストを抑えつつ迅速に展開できる。その結果、より多くのユーザーが5Gを利用し、5Gの新たなニーズが生まれていくという。
その自動化とは「実現したいサービスに基づき、必要なリソースを柔軟に割り当て、ネットワークを自律的に構成すること」と小出氏は説明する。
5G SAでは、カスタマーのニーズに応じてネットワークを仮想的にスライシング(分割)し、サービスを提供できる。一例として、あるイベント会社(カスタマー)が大規模イベントの参加者向けに、期間限定の特別な5G VIP通信サービスを提供したいというケースを想定し、コマーチのBSS/OSSでどのように自動化できるかを見てみよう。
まず通信事業者は、イベント会社のニーズを踏まえて、BSSのポータルサイトに5G VIP通信(高速・低遅延)サービスなどのオーダー情報を入力する。「カスタマーが、通信事業者が提供するポータルサイトに直接入力(デジタルセルフサービス)できるようにすることも可能です」(小出氏)
BSSに入力されたサービスオーダーはOSSに引き渡され、まずサービスオーダーマネジメント(SOM)で処理を行う。SOM内部では5G VIP通信サービスのネットワークスライス、通信速度、QoSなどの仕様や定義を管理するサービスカタログやサービスの状態を管理するサービスインベントリと連携してサービスのオーケストレーションを行う。
また、SOMからリソースオーダーマネジメント(ROM)にサービスに必要なリソースの確保、変更などのリクエストが送られる。ROMはこのリクエストに従ってネットワークの物理、仮想リソースの設定を行う。これにより、BSSで入力された5G VIP通信サービスを実現するネットワークスライスが自律的に構築されるという仕組みだ。
このフローを示したのが図表1である。コマーチはBSSや、SOMとROMなどのOSSモジュールをフルスタックで提供し、通信事業者のマネタイズを全面的に支援できる。
図表1 コマーチのソリューションによるリソース割り当て
また、コマーチのソリューションは、通信業界の国際的な標準化団体であるTM Forumが定めるオープンAPI仕様に準拠しており、各機能をモジュールとして導入することも可能だ。「必ずしもすべてがコマーチの製品である必要はありませんが、マネタイズのためにはこうしたパーツを適切に揃えることが重要です」と、カントリーマネージャーのウカシュ・ゼズラク氏は述べる。