「大変光栄なことにシスコジャパンは前年度、2桁の成長を遂げることができた。新年度のキックオフの場でも、会長のジョン・チェンバースから唯一日本だけがカントリーアワードを受賞した」
8月から新しい事業年度に入ったシスコシステムズは2011年11月2日、2012年度事業戦略説明会を開催した。全従業員の約9%にあたる6500人の人員削減を発表するなど、グローバルでは業績悪化に苦しんだ2011年度のシスコであるが、平井康文社長の冒頭のコメントにある通り、「Ignite Japan」(燃え上がれ日本)を掲げて臨んだ日本法人は好調。その前年度に引き続き、今年度も「Ignite Japan」を旗印にしていくというが、もちろんその中身はまったく同じではない。「インフォメーションテクノロジーからビジネステクノロジーへ」が2012年度のキーワードになるという。
シスコ社員の体験、感動をベストプラクティスとして提供
シスコのいうビジネステクノロジーとは、「情報」という切り口だけでなく、「ビジネス」の観点から企業を支えたり、新しい事業をドライブしていくためのテクノロジーのこと。製品の提供にとどまらず、企業戦略や人財、組織、プロセスといった、もっと“上流工程”から企業の競争力強化に携わっていくという。
戦略や人財、組織などの“上流工程”も含めた「ビジネステクノロジー」を提供 |
そのバックグラウンドとなるのは、シスコ自身の経験である。同社は自社のテクノロジーを自ら積極的に活用していることで知られるが、「もちろん成功事例もあるし、一方でいろいろな失敗も経験した。そうしたシスコ社員の体験、感動を1つのノウハウ、ベストプラクティスとして顧客に提供していく」(平井氏)という。
このビジネステクノロジーは具体的には次の3つのテクノロジーから構成される。まずはビデオによるリアルタイムコラボレーションがいつでもどこでも可能な「パーベイシブビデオ」だ。「テレビ会議はこれまで固定されていた。しかし、音声が完全にモバイル化・パーソナライズされたように、今後はビデオももっともっとモバイル化・パーソナライズしていくと予想している」(平井氏)。
パーベイシブビデオとは、いつでもどこでもビデオのこと。音声と同様、そういう時代がやってくるという |
2つめは「インテリジェントネットワーク」だ。専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏は、クラウドやモバイルデバイスの普及、BYOD(私物デバイスの業務活用)の進展など、ITの利用環境が大きく変化するなか、ネットワークにおいては「安全につなげるという役割」だけではなく、今後は「仮想的に結び付いた空間の中で、どう満足していただくか――QoE(Quality of Experience)が非常に重要になる」と指摘した。そして最後は「クラウドサービス」だが、これら3つのテクノロジーを横断的に支えるインフラとしてシスコが推進するのがVXI(Virtual eXperience Infrastructure)である。シスコは、仮想化されたデータセンターインフラから、仮想化に対応したネットワークおよびエンドポイントまでをエンド・ツー・エンドで提供する。
VXIの全体像 |
VXIを象徴するエンドポイントといえば、Android搭載のタブレット端末「Cisco Cius」が挙げられるが、Ciusの日本展開については今月中旬に正式発表を行う予定だという。Ciusの特徴は、仮想デスクトップ用ゼロクライアントと、電話やビデオなどのコラボレーション用端末の1台2役をこなせること。「会社に入社して最初に渡されるのは、今は電話とPCだ。しかし数年後には、Cius1台になっているだろう」と執行役員 コラボレーション事業の公家尊裕氏は語った。