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「実需が伸びるスピード以上に投資する側の鼻息が荒すぎる」
生成AIの登場を機に、GPUサーバー市場の成長がさらに加速している。富士キメラ総研の予測によれば、2028年のデータセンター用GPUサーバー市場規模は、2022年比で16.1倍にも拡大する見込みだ。
ただし、GPUサーバーが設置されるデータセンターの側に立つと、生成AIブームの影響はまだそれほど大きくないようだ。ハイパースケーラーの日本への大規模投資も次々と発表されているだけに、意外とも言える。
例えばマイクロソフトは今年4月、約4400億円を日本のAIとクラウド基盤増強のために投資すると発表した。しかし、IDC Japan Software & Services リサーチマネージャーの伊藤未明氏はこう推測する。「かなりの部分はサーバー、特にGPUサーバーではないか。NVIDIA DGX H100の価格は1台4000万とか5000万円とか。1億円あっても2台しか購入できない」。4400億円の内訳は明らかにされていないが、GPUサーバーを設置するデータセンターへの投資額はさほど多くないだろうという見方だ。
今年4月10日、米マイクロソフトは岸田首相の訪米にあわせて、日本国内のAI およびクラウド基盤強化のため、29億ドル(1ドル152円換算で約4400億円)を今後2年間で日本に対して投資すると発表した。また翌週の4月17日、今度は日本オラクルが日本のクラウドコンピューティングとAIインフラの需要拡大に対応するため、今後10年間で80億ドル以上の投資を計画していると発表した (写真出典:マイクロソフト)
富士キメラ総研 第三部 担当課長の羽賀史人氏も次のように話す。「比較的状況が明らかである一般企業の投資動向について言うと、生成AI用のGPUサーバーを購入してラックスペースを新たに借りるという需要は確かに増えているが、データセンターを1棟建てるほどの需要が一般企業から生まれているかというと、まだそこまでではない」
約1年半前のChatGPTの一般公開直後にデータセンターの新設に動き出しても、データセンターの建設には通常4〜5年はかかる。そのため多くの計画が水面下に隠れているだけと考えることも可能だが、そもそも生成AIの登場以前から、データセンターの建設ラッシュが続いていたことが背景にはある。
伊藤氏は、今すでに見えているデータセンターの増床分だけでも、一時的に供給過剰に陥りかねない可能性すら指摘する。「実需が伸びるスピード以上に投資する側の鼻息が荒すぎる。実需が足りないということではなく、もう少し長い時間をかけて伸びていくのではないか」