「ワイヤレスジャパン×WTP 2024」の802.11ah推進協議会(以下、AHPC)ブースでは、会員企業8社がWi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah)に対応した最新の製品、ソリューションを展示している。
その一角を占めるNEWRACOMは、Wi-Fi HaLowの発展に大きな功績を果たしたチップベンダーだ。
AHPCの会長を務める小林忠男氏は、「NEWRACOMは日本の802.11ahにとって大恩人」と讃辞を惜しまない。というのも、802.11ahの検討が始まった2018年当初、対応するチップを開発できたのはNEWRACOM一社しかなかったからだ。しかも、同社は「実験に積極的に参加してくれた」。NEWRACOMがチップを提供することにより実験局を作ることができ、その後の制度化につながっていったのだ。
2022年9月、Wi-Fi HaLowが国内で商用化され、災害対策や農業などで導入事例が増えている。AHPCブースには対応ルーター、ゲートウェイ、カメラなどの各社製品が並ぶが、この活況に至るにはNEWRACOMの役割が欠かせなかった。
ワイヤレスジャパン×WTP 2024に合わせ、NEWRACOMからVP of Global Marketing & SalesのFrank Lin氏が来日し、自らブースに立ち来場者とコミュニケーションを取っている。
NEWRACOM VP of Global Marketing & SalesのFrank Lin氏
Wi-Fi Halowは“大規模IoTからパーソナルまで”
Lin氏は、920MHz帯を用いるWi-Fi HaLowの長所を「典型的な大規模IoTから、個人向けのIoTにわたって有益なことだ」と説明する。
広いカバレッジと映像伝送も可能な通信容量を持つWi-Fi HaLowは、工場、河川、農場・牧場など、広い範囲にカメラやセンサーを設置して監視を行う用途に向いているとされている。しかし、「様々なユースケースがある」とLin氏は話す。
例えば、タブレット端末との通信に用いて、リテール店舗での電子決済や、飲食店舗でのオーダーに活用できる。また、「広範囲のコネクティビティを生かして、将来的にはコネクテッドカーに利用できるだろう」。
そしてLin氏は、日本市場においてWi-Fi HaLowが「ルーラルエリアで役に立つ」とみている。高齢者の見守りや災害対策、郊外での交通のスマート化に貢献するという見立てだ。
日本以外での展開について聞くと、注目しているのは発展途上国だという。通信環境の整備が進んでいない地域に4G、5Gを整備するのはコストがかかるが、Wi-Fi HaLowは「簡単に整備でき、人口密集地におけるセルラーやWi-Fiのオルタナティブになる電波テクノロジーだ」。
NEWRACOMが開発したWi-Fi HaLoW SoC
今後Wi-Fi HaLowが普及していくためには、「素早く市場投入することが必要だ」とLin氏。すでにNEWRACOMのWi-Fi HaLowチップは6mm四方のサイズを実現しているが、さらに開発速度を上げなければならないという。
そして、ウェアラブルデバイスなどに対応チップを組み込み、パーソナルな日常生活で使われるようにすることが具体的な目標になると話す。「IoTの革命的な利用方法を確立したい。それにはリアルタイムIoTが必要だ」と、Wi-Fi HaLowが生活の隅々までIoTを行き渡らせるためのキラーテクノロジーになると展望した。