ソフトバンクは2024年3月27日、ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transfer、以下WPT)の技術を商用環境で検証できる施設「ワイヤレス電力伝送ラボ」(以下、WPTラボ)を2023年12月に開設したと発表した。
所在地はテレコムセンタービル(東京都江東区)で、920MHz帯のWPT局を備える。
近年、IoTビジネスの拡大などを背景に、IoTデバイスやセンサーの数が増加しており、今後もデジタルツインなどの普及に伴って、その数が爆発的に増加していくと予測されている。こうした中で、IoTデバイスやセンサーのバッテリー交換や給電方法が課題になっており、その課題を解決する手段の1つとして、電波を活用してワイヤレスで給電を行うWPTの技術が注目を集めています。しかし、WPTの環境の構築には技術的な調整や導入コストが発生し、気軽に検証できる環境がないため、サービス化の事例はあまり多くない状況だ。
ソフトバンクは、Beyond 5G/6Gに向けた取り組みの一環として、WPTの高周波化および通信との融合に向けた研究開発を2021年から進めており、現在はWPTによる送受電を一元的に制御・管理できるプラットフォーム(特許取得済み)の実用化に向けて研究開発を行っている。また、2022年5月に国内でのWPTの利用が制度化されたことを受けて、パートナー企業と連携して、ソフトバンクの事業所内にWPT局を積極的に設置するとともに、WPTの技術を活用した装置やシステムの動態展示を行ってきた。そこでソフトバンクは、こうしたノウハウを活かして、WPTの技術の普及や、WPTの技術に関するオープンイノベーションの創出を促進することを目的に、WPTの技術を商用環境で検証できる「WPTラボ」を開設したという。
WPTラボでは、ソフトバンクとパナソニックホールディングスが共同で開発した、ストラップ型受電装置と温湿度センサーの検証を進めている。また、この装置とセンサーを活用した会議室内の環境測定システムの検証を実施しており、バッテリーレスで温湿度データの取得に成功しているとのこと。
今後は様々な企業・団体が「WPTラボ」を活用してWPTを気軽に検証できるよう、2024年度中を目途にオープンラボとして運用を開始する予定だ。また、ソフトバンクがモバイル通信の提供で培ってきたノウハウを活かして、様々なWPTのシステムや機器に対応した、WPTの送受電を一元的に制御・管理できるプラットフォームの社会実装に向けて取り組むとしている。