NTT、日本仮想化技術(VTJ)、ジャパン・マルチハンターズ、NPO法人おだわらイノシカネットの4者は2024年3月22日、屋外設置型IoT端末にレイヤデータ通信技術を実装し、これまで猟師の人力稼働に依存していた設置罠見回り作業時間を従来の半分以下に効率化できることを確認したと発表した。
具体的には、日々の設置罠見回り作業中の罠探索、および罠再設置に対する作業効率化の効果を検証。今回の実証実験では、NTTが開発したIoT向け拡張低レイヤデータ通信技術を、VTJの屋外設置型IoT端末に実装した「罠センサ」と、罠センサから送信される位置情報を元に設置方向を表示する「罠探索キット」を用意。小田原市の山林において作業効率化の評価を行った。
野生鳥獣対策の現状、および実証実験イメージ
罠探索作業における評価は、罠設置エリアに4個の罠センサを仕掛けた条件において実施。既存技術(BLEビーコンと既存アプリを用いた探索)を用いた場合、4個すべての罠の発見に平均32分56秒を要したのに対し、同技術(NTT提案技術と探索キット)を用いた場合では、平均14分7秒に短縮でき、57%の作業時間効率化を達成できたという。
また、一定期間捕獲できていない罠再設置作業における評価では、手作業で行っていた従来の方法では1個の罠あたり10分12秒の作業時間を要していたのに対して、同技術を用いた場合では1台あたり1分32秒に作業時間を短縮でき、85%の作業効率効果が確認できたという。
実証実験の様子(左)、本技術を実装した探索キット(右)
様々な環境に設置されたIoT端末の付加情報(端末の識別子、場所、状態、設定等)を効率的に収集するためには、設置環境で接続するネットワークリソースに対して低負荷であること、および端末の処理能力が限られるIoT端末でも実装可能な簡易構成であることが必要となる。
今回開発した拡張低レイヤデータ通信技術は、通信の標準規格において規定されているレイヤ2制御フレームの中で、開発者が任意に実装可能と規定されている拡張領域に付加情報を格納してデータ発信を行うことにより、主通信に影響を与えることなく付加情報を収集することを可能としているという。
このようなレイヤ2制御フレームの拡張領域を活用したデータ通信機能をIoT端末に実装することにより、ネットワーク接続が確立していない状態においても付加情報収集を実現できるという。これにより、設置現場においてIoT端末を迅速に探索することが可能となる。また、設置場所等の付加情報に応じた複数のIoT端末への一括設定投入など、従来は1台ずつ人手で行っていたIoT端末の新規設置・移設作業の自動化が可能になるとしている。