近年、ブロードバンドサービスは、屋内から屋外へと利用シーンが広がり、無線インフラの拡充が急務になっている。その背景には、サービスの高品質化と低価格化が進み、どこからでも利用したいという欲求の高まりがある。
周知の通り、日本では屋内を中心にWiFiアクセスポイントが普及しているが、このようなニーズから今後は、屋外を中心としたWiFi基地局によるデータ・オフロードが急速に普及・拡大していくと考えている。
ここでいう“データ・オフロード”とは、基地局やアクセスポイントが本来、取り扱うべきデータトラフィックを他へ逃がしてやることである。現在、3G携帯電話のネットワーク上を流れるデータのトラフィックは急増しており、これを吸収していくための最適な手段の1つとして、筆者は屋外のWiFi基地局を増設し、そこへ迂回させる方式が普及していくと予想している。
その根拠となるのは、以下の2つの動向からである。
未来予想の根拠1:ケータイの利用形態の急変
まず1つは、「ケータイの利用形態の急変」である。
ケータイは、ここ数年の間で、データ通信の利用が爆発的に増えている。スマートフォンなど高機能な通信端末が普及しはじめ、屋外でのインターネット利用が生活シーンのなかで欠くことのできないものになりつつあるからだ。屋外での移動しながらの利用が増加したため、無線で処理すべきデータ量が激増し、モバイルキャリアのインフラをひっ迫した状態にしている。
これを解消する対策として真っ先に考えられるのは、携帯電話基地局の増設である。しかし、それを押し進めることは容易ではない。
3G携帯電話の基地局は高価であり、投資コストが大きくなってしまう。また、3Gは免許が必要なため、手続きなどに多くの時間と工数がかかる。このことは、3GだけでなくWiMAXやLTEにも言えることである。
また、基地局増設はあくまでもデータトラフィックの増加に対処するためのインフラ投資であり、新たなサービスを開始したり、新たな加入者を獲得できるといった収益面での直接的効果が薄いのも難点である。
これらの要因から、3G基地局の増設は、回線ひっ迫を回避する対応策の1つではあるものの、費用負担が重すぎるため短期的な現実解とはならない。そこで有効な手段の1つとなるのが、免許が不要で設備投資が廉価で済むWiFi基地局、つまり無線LANネットワークによるデータ・オフロードなのだ。無線LANのサービスエリアを屋外に多数構築することにより、本来3G基地局で直接カバーするべきデータトラフィックを大幅に軽減することが可能になる。