――KDDIを中心とするMediaFLO陣営との間で激しい争いを繰り広げた結果、mmbiが携帯端末向けマルチメディア放送の周波数免許を獲得しました。サービス開始に向けた意気込みをお聞かせください。
二木 長期にわたる論戦を経て貴重な周波数をいただいたことで、身の引き締まる思いです。ぜひとも事業を成功させたいと考えています。
――携帯端末向けマルチメディア放送の事業スキームはどうなっていますか。
二木 地上波のテレビ放送はハードとソフトが一体で、免許を取得した事業者が自ら番組を制作・放送しています。これに対し、マルチメディア放送はインフラを担う受託放送事業者と、コンテンツを担う委託放送事業者に分かれた「ハード・ソフト分離制度」を採用しています。これは使用できる周波数帯域が14.5MHzと限られていることもあり、インフラを効率よく使いつつ、多様な放送事業者の参入を可能にして市場の活性化を図る狙いからです。
蓄積型放送で差別化
――携帯端末向けマルチメディア放送と、すでに携帯電話で始まっているワンセグ放送とは差別化が難しいのではないかとの指摘もあります。
二木 一般の方にはワンセグ放送と同じに見えるかもしれませんが、マルチメディア放送は「一斉同報」「プッシュ型」といった放送の特徴と、「いつでも、どこでも持ち歩ける」「タイムギャザリング(細切れの時間をつなぎ合せる)」といったモバイルの特徴を合わせ持っており、また動画などのリッチコンテンツを自由に持ち歩くことができるようになります。
mmbiでは受託放送事業者として、従来のテレビ放送のように放送を受信しながらライブ映像が視聴できる「リアルタイム型放送」と、端末に映像ファイルなどのコンテンツをいったん蓄積して視聴する「蓄積型放送(ファイルキャスティング)」の2種類の放送サービスを提供します。このうち蓄積型放送はマルチメディア放送ならではの特徴で、夜間などに番組を自動的に端末内に蓄積し、視聴者は空いた時間に好きな番組や属性に応じてレコメンドされた番組を見る、といったことができます。例えば、睡眠中に朝刊のコンテンツが配信され、朝起きて端末でニュースを見ることなどが想定されます。
さらに、携帯電話との連携によってコンテンツの視聴中に気になった情報を検索したり、テレビショッピングの番組を見ている時、放送中に紹介された商品を直接購入することなども可能になります。ワンセグでも同様のことはできますが、地上波のテレビ放送と同じコンテンツを流しているのに対し、マルチメディア放送はオリジナルのコンテンツを使います。
――委託放送事業者の参入に向けた動きはどうなっていますか。
二木 現在、総務省で仕組み作りを検討しているところで、来春には方針が決まると想定しています。その方針に基づいて申請した企業に対し、総務省で審査が行われます。私どもが開設計画で示したセグメント数は33セグメントで、1セグメント形式が7つと13セグメント形式が2つと2通りのタイプを用意しています。これをどう分けるかが今後の審査で決まっていきます。我々は多くの企業に参加していただけることを期待しています。