第2章「経営視点から見た社内SNSの可能性」ではソーシャルテクノロジーのメリットを踏まえた上で、どのように企業に適用していくのが良いかについて考えていきます。
第1章で述べた通り、インターネットの世界ではソーシャルテクノロジーが日々進化し、企業の活用事例も増えてきていますが、当初は、これらが企業活動と直接関係があるとは捉えられていませんでした。日本の多くのビジネスマンにとって、「SNS」「ブログ(Blog)」「Wiki」といったソーシャルテクノロジーのキーワードから連想されるイメージは“遊びのツール”であり、「会社の仕事とは無関係のもの」「帰宅してからオフの時間に触れるもの」だったのです。つまり、ビジネスとの接点は意識されていませんでした。
しかし今や、ソーシャルテクノロジーをビジネス活動の中で見直し、組織への組み込みを図ること、それが企業の生き残りを左右する鍵のひとつになってきています。その背景としては、テクノロジー側が成熟してきたという面だけでなく、多くの企業が置かれている現代の過酷な――言うならば、「昨日までと違う今日」を生きる運命を背負った――経営環境も無視できないでしょう。
「最も強いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る。」
これはダーウィンの進化論について述べた言説ですが、現代においては、企業について語られた言葉のように見えてきます。これほど企業が、“変化”というプレッシャーにさらされている時代はかつてなかったでしょう。
世界経済も日本経済も大きな変化の渦中にあります。グローバル化の波の中、情報は世界を一気通貫でつなぎ、マネーも流動化しています。企業は競争相手が増える一方、どこで足をすくわれるか分かりません。史上最高の黒字を上げた企業がその翌年に赤字に転落する、果ては「ビッグ3」と言われた企業が破綻の危機にさらされる。こんなことが、当たり前のように起こる時代となりました。
ビジネスの形態も多様化し、業種・業態の境目はアメーバのように日々変化しています。例えば、創業1年半でGoogleに2,000億円で買収された YouTubeは、消費者が映像を見るのに使う時間のある部分をテレビから奪い、アップルが手がけるコンテンツ配信サービス「iTunes Store」は音楽流通のあり方を変えてしまいました。かつての強味が弱味になり、逆に弱味が強味になる、といった環境変化は日常茶飯事です。
商品寿命も極端に短くなりました。中小企業研究所の「製造業販売活動実態調査」(2004年11月)によると、1990年代ではヒット商品の4分の1以上 が「5年超」の商品寿命を持っていたのに対し、2000年代に入ると「5年超」はわずか5.6%、逆に「2年未満」が10%超から50%超に増えていま す。
こうした例は枚挙に暇がありません。ともかく、企業が“遺産”で未来永劫食っていける時代でなくなったのは確かです。
企業が直面している現実は、同時にそこで働く“個人”に対しても影響を及ぼしています。昨日までと今日とで変化がなく、やるべきことがはっきりしている状況であれば、歴史の中で最適化された組織において上意下達がなされていると、それなりに企業は回っていったはずです。ただ、変化の激しい状況ではそうはいかず、「自分は単なる一社員だから、誰か偉い人が考えた通りに働けば良い」という姿勢は通用しません。変化の影響を直接受ける前線の社員が考え、気づきを 共有し、より充実した判断力を組織として持っていくことが重要です。社員の“頭脳力”が企業の“頭脳力”につながる。これが企業の生き残りにとって重要なのです。
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