NHK放送技術研究所の日ごろの研究成果を一般に向けて公開する「技研公開2023」が2023年6月1日から6月4日まで、東京・世田谷の同研究所で開催されている。
展示は大きく「イマーシブメディア」「ユニバーサルサービス」「フロンティアサイエンス」の3つに分かれる。会場1階の順路の最初に展示されているのは「ユニバーサルサービス」の「Webベース放送メディア」の諸技術だ。放送とインターネットという伝送路の違いによらず、場面や目的に応じた様々なアプリケーションによってコンテンツを視聴者に届けるための研究が紹介されている。
ネット動画配信を低遅延、多様に
このうち、「クラウドネイティブ配信基盤技術」では、インターネット動画をより安定的かつ効率的に配信するための技術の1つとして、「多様なリニア配信の提供に向けた効率的なストリーム生成・配信技術」を展示。クラウド上で地域や視聴者の好みに応じて配信ストリームを生成しすることで、多種多様なリニア配信チャンネルを効率的に提供するという。デモでは、全国に向けて放送される番組、地域限定の番組、個人の好みに応じた番組が中断や停止をすることなく切り替わる様子を上映していた。
多様なリニア配信の提供に向けた効率的なストリーム生成・配信技術
また、「必要な情報を素早く確実に届けるための低遅延配信技術」は、WebTransportというWeb通信用APIを用いて、リアルタイムに取得した視聴者の通信状況から配信する映像の画質を決定して配信するという技術だ。クライアントからサーバーへのリクエストではなく、サーバー側で回線品質を推定する点に特徴があるといい、バッファ込みで遅延を300ミリ秒に抑えることができるとのことだ。
WebTransportを用いた低遅延配信のデモ。中央ディスプレイ右側(2段)が受信側画面
NHKとNTT共同の取り組みである「リニア配信における動的光パスネットワーク技術」は、IOWN構想におけるAPNをライブ中継に活用しようとするもの(参考記事:NTT、APNを活用したE2E光映像配信アーキテクチャの基本機能を実証|BUSINESS NETWORK)。各拠点からのライブ映像を光パスネットワークを通じて放送事業者のリニア配信基盤に送り、番組編成に従って切り替えることで、地域ごとのリニア配信を低遅延に行えるという。光パスは編成に応じてオンデマンドで開通、閉塞する。