<特集>IOWN時代、はじまる【NTT、富士通、NECがユースケース解説】「APN IOWN1.0」で一体何ができるのか?

圧倒的な遅延性能を持つAPN IOWN1.0の登場により、私たちの社会はどう変わるのか。“ネットワークの限界”が制約となっていたイノベーションが、今後次々と生み出されていく。NTTのAPN IOWN1.0のユースケースを解説する。

リアルより速い──。

音楽と放送のプロに対して、オールフォトニクス・ネットワーク(APN)の実力をまざまざと見せつけたのが、2022年11月に大阪城ホールで行われたリアルタイム遠隔合唱の実証実験だ。

毎日放送主催「サントリー1万人の第九」の第40回記念講演で、東京と大阪の2つのリモート会場と大阪城ホールをAPNで接続。離れた会場にいる指揮者・オーケストラ・合唱者が合唱した。

東京-大阪間は約700km。それでも映像・音声ともに人が違和感を覚えるようなズレは生じなかった。合唱の参加者からは「想像していたよりもリアルタイムで驚いた」「“幸せなら手を叩こう”で叩いた時もぴったり合って感動した」、毎日放送の担当者からは「今まで体験したことのない遅延量」と称賛の声が相次ぐ。

それもそのはず、遅延の測定結果は音声で約7ミリ秒(ms)、映像で約15ms。人が同時に発音してズレを感じる閾値は20msだから、違和感が生じるはずもない。大阪城ホール内でも、ステージとスタンド上段の間で音声が届くには150msかかる。APNを介した東京の音声のほうがはるかに早く到達するのだ。

音速と光速にはそれほど隔絶した差がある。光の速さを存分に活かせるAPNは、空間の制約を越える体験をもたらす。

APNで空間をつなぐ

APN IOWN1.0は、離れた空間同士や現実空間とサイバー空間をつなぐシーンでの活用が見込まれている。

例えば、コロナ禍で定着したライブイベントのオンライン配信がある。現在は映像・音声を視聴するだけだが、APNの性能を活かせば、演者と観客が一体感を得られるような体験が可能となろう。スポーツ中継やeスポーツでも活用が期待される。

ユースケースはエンタメに留まらない。医療分野では遠隔手術への応用が始まっている。

2022年11月に、メディカロイド製の手術支援ロボット「hinotori」を使った実証実験が行われた。手術室から120km離れた遠隔サポート拠点をAPNで接続し、非圧縮の8K映像と音声を伝送して手術室内の環境を共有した。

遅延は1ms以下。両拠点間でコミュニケーションしながら、通常のロボット手術と変わらない施術が行えることを確認した。

遠隔地をつないであたかも同じ空間を共有しているような環境を作り出すこうした用例は、車両・重機の遠隔操作をはじめ様々な産業界の需要を喚起するだろう。

汎用的なシーンとしては、複数拠点のオフィスをつないで臨場感溢れるコミュニケーションを行うといった使い方も考えられる。

デジタルツイン/サイバーフィジカルシステムやメタバースも、通信容量と遅延が普及を妨げる要因となるが、APNは、その社会実装と普及を加速させるのに貢献しそうだ。

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