キャリアネットワーク事業はNECのグローバル戦略における牽引役にならなければならない――。
キャリアネットワークビジネスユニット(BU)・取締役執行役員専務の安井潤司氏はこう力強く語る。
NECは7月、中期経営計画「v2012」(2010年2月発表)の実現に向けて、中核事業の1つであるキャリアネットワーク事業の成長戦略を発表した。2009年度の売上高は前年度比約20%の大幅減となる6274億円だった。2010年度にはこれを6700億円へ回復し、さらに2012年度には売上高9000億円、営業利益率9%を目指すとの高い目標を掲げた。
図表1 キャリアネットワーク事業の2012年度目標 |
2007年度以降、NECのキャリアネットワーク事業の売上高は減少が続いている。今回の「V字回復戦略」のポイントは「グローバル」だ。
NECは中計「v2012」および長期経営計画「NECグループビジョン2017」において、海外比率の向上を基本路線に敷いている。同社全体の売上における海外比率は2009年度時点で19%。これを2012年度に25%、2017年度には約50%に高める計画だ。
安井氏の言は、キャリアネットワーク事業がグローバル展開において先行する実績を踏まえてのものだ。2009年度実績で28%の海外比率を2012年度には40%まで引き上げ、海外キャリア向けビジネスを国内事業に比肩するレベルに育てる意向だ。
トラフィック急増を追い風に
とはいえ、キャリア向け事業をめぐるベンダー間競争は年々熾烈さを増している。これを勝ち抜く戦略について述べる前に、まずは市場環境と2010年度の事業概況について整理しておこう。
「特に海外が厳しかった」と認める通り、2009年度は世界経済の低迷に伴って市場規模が10%超縮小した。さらに、投資抑制や価格下落等による海外移動系キャリア向け売上減、海洋大型プロジェクトの契約遅れ、為替レートインパクトなどが売上高減少の主要因となった。
2010年度は、緩やかな市場回復が見込まれるものの、国内キャリアのインフラ投資は一巡し、当面は一定規模を維持する見通しだ。売上高予想は、09年度比7%増の6700億円。増収要因としては海洋事業の復調、新興国向けモバイルバックホール事業の売上増、海外でのフェムトセル受注拡大などを挙げており、増収分のほとんどを海外で稼ぎ出す見込みだ。
今後の市場見通しについては、「トラフィックの急増」がキーポイントだ。新興国で携帯電話需要が急増しているのに加え、スマートフォンの急速な普及を背景として世界的にモバイル利用が音声からデータ主体へと移行している。
また移動体のみならず、国際間・巨大データセンター間でのデータ伝送需要も増大している。
こうした潮流は、まさに追い風だ。ブロードバンド・モバイルの先進国である国内事業での実績をベースに、ネットワークの増強、モバイルネットワークの高速化・高度化ニーズに応えることで飛躍を目指す。
またキャリアは、定額料金プランが足かせとなって、トラフィック増を収益アップにつなげられないという大きな課題に直面している。これを解決するソリューションの提供も、今後のビジネスの主軸となる。OPEXの低減、高付加価値サービスの提供などを実現してキャリアの収益構造を変革するためのOSS/BSS、サービスデリバリープラットフォーム領域でも事業機会の広がりが期待できる。