メタバースを実現するネットワークについて「5GでOK」という見方もあるが、それは違う。5Gだけでメタバースをやるのは厳しい──。
そう語るのは、総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の構成員である東京大学大学院 情報理工学系研究科 准教授の塚田学氏だ。「5Gの超高速、超低遅延、同時多接続ができるところはエッジからユーザーの間だけ。一般的に言われるメタバースは、無制限のユーザーが同じ体験ができることを想定している。地理的に分散したインターネットを越える通信が必要だ。これはかなり難しい」
東京大学大学院 情報理工学系研究科 准教授 塚田学氏
通信キャリアインフラを提供するノキアソリューションズ&ネットワークス CTOの柳橋達也氏もネットワークアーキテクチャの見直しの必要性を強調する。「メタバースのUIであるXR(eXtended Reality:VR/AR/MRを包括したもの)のデータ量はとてつもない。いかにネットワークを最適化し、ユーザーの体感に影響を与えないような処理ができるか。これは大きなチャレンジになる」
ノキア ソリューションズ&ネットワークス CTO 柳橋達也氏
インターネットの主役はZ世代
メタバースは次世代インターネットの構成要素の1つだ。SNS等を使って映像・音声を非同期型で共有する現代から、3Dデジタル空間でインタラクティブな体験をする次世代への飛躍が始まっている。メタバースはその新たなプラットフォームになる。
主役は「Z世代」だ。デジタルネイティブとも言われるこの世代の特徴は、現実世界とインターネットの体験に差を感じない点にある。「オンラインのアイデンティティが拡大している」(塚田氏)のだ。米国の調査では、Z世代の33%がオンラインとオフラインの自分に違いはない、35%がよく似ていると回答。さらに「55%がインターネットはオフラインよりも創造的、つまり良い体験ができると考えている」。
一方、ネットワークの視点では、「2030年にはデジタルネイティブ世代が、コンシューマーネットワークのトラフィックの7~8割をさばいてしまう」(柳橋氏)とする予測もある。「Z世代がエンジョイできるネットワークをいかに柔軟に提供できるかが課題だ」と同氏。その要件とはどのようなものか。