――庄司社長の略歴を拝見しますと、NECでずっとIT畑を歩いて来られたようですね。
庄司 この4月に当社に常務として赴任するまで、ずっと一貫してIT、コンピューター系でした。実は、現在当社のメイン商材の1つになっているPOSの事業部とも、2001年にNECインフロンティアへ事業統合される前まではNEC内で一緒にやっていました。
――NECは矢野薫前社長時代から「ITとネットワークの融合」を掲げてきましたが、グループの企業ネットワーク製品開発部の実働部隊を抱える御社の役割も重要ですね。
庄司 その通りです。当社はIT系でPOS、ネットワーク系でPBX/ビジネスホンというそれぞれ業界では国内シェアトップを争う強力な商材を有しています。そうしたなかでIT、コンピューター系をやってきた私が赴任したので、今後のクラウド時代に向けてこれらを融合した形で新市場に向けた力強い商材を投入することで、NECが掲げる「ITとネットワークの融合」を、グループの中核として当社が広めていきます。それが私に課せられたミッションだと考えています。
Aspire Xが売れている理由
――現在、PBX/ビジネスホン市場は非常に厳しい状況にあります。そうしたなかで、御社のビジネスホン「UNIVERGE Aspire X」は好調と言われています。
庄司 まず、市場が厳しい理由は、見解はいろいろとあると思いますが、私は世の中が少しずつ進化しているなかで、「我々は通信機メーカーだ」というように、従来の文化に縛られ過ぎている点も大きな要因ではないかと思っています。Aspire Xが売れているのは、電話機としての使い勝手の良さを追求している点はもちろんありますが、ルーター機能を装備するなど、時代の変化に対応している点も大きいのではないでしょうか。
我々はこの数年、クラウド時代に向けて少しずつビジネスモデルを変えてきました。ITとネットワークの融合への対応は、開発や生産の面でなかなかシフトが難しいことだと思います。幸い当社はIT系とネットワーク系の技術者も多く抱えており、それぞれのマーケットでの実績もあるため、上手く相乗効果が出せているとみています。
――その点は同感です。PBXについてはどうでしょうか。通信系ディーラーに話を聞くと、PBXを販売するよりもビジネスホンを提供するほうが安価等の理由で、ユーザーに受け入れられやすいようです。
庄司 本来は機能的、システムサイズ的にSVシリーズとAspire Xは顧客層が異なるのですが、最近の市場の流れでは、お客様はある程度の機能が使用できれば、より低価格な商品を導入される傾向にあります。しかしながら、ビジネスホンがPBXのニーズをすべて充足できるかというと、そういうわけにはいきませんから、今後もPBXへの対応は欠かせません。
当社はネットワークの小規模システムから大規模システムまで幅広いシステムの開発部隊を有しています。私はこの4月に赴任する前も4年間、社外取締役として当社を見て来ましたが、非常にバランスのよい会社だなという印象を持っていました。この厳しい市場環境のなかで生き残っていくためには、当社の強みを発揮して、小容量から大容量までよりシームレスに連携できるような製品を作っていくことが重要であると考えています。
――電話機に関しては統一になっていますね。
庄司 電話機はすでに共通化されていて、かなりの効率化になっています。またプラットフォームのある部分までは共通化されて、これも効率化に寄与しています。今後はその範囲を拡大するとともに、ITとネットワークを融合した、クラウド時代にふさわしい製品開発に繋げていきたいと思っています。