「ローカル5Gのシステムと技術を持つ企業が、ここまで集まって検証ができたのは初めてだ。ローカル5Gの普及に向けて技術を持ち寄り、情報交換できる時期がようやく来た」
NPO法人ブロードバンド・アソシエーション(理事長:岩本敏男氏)の研究会として、約2年前の2020年3月に発足した「ローカル5G普及研究会」。委員長を務める中尾彰宏氏(東京大学大学院教授)は、2022年7月19日に初開催した合同検証会の意義についてそう語った。
今回の検証会にはNEC、IIJ、FLARE SYSTEMS、APRESIA Systems、NTT東日本が参加し、3種類のSub6帯対応ローカル5G基地局と6種類の端末を持ち寄って相互接続性を検証。上り/下り通信に使うリソースの配分を通信事業者の5Gサービスと同様にした「同期運用」と、上り通信のリソースを増やした「準同期運用」の両方でスループットを計測した。
合同検証会で使用したNEC製のローカル5G基地局「UNIVERGE RV1200」(左)。
CU/DUとRUを一体化し、小型化している。右側の円筒形の端末はノキア製CPE
スマホ・PCやCPEなど様々な端末で検証
検証を行ったローカル5GシステムはすべてSA(Standalone)構成で、Sub6帯を使用した。会場となった「NTT東日本 ローカル5Gオープンラボ」(NTT中央研修センタ内)に、APRESIA SystemsとNEC、FLARE SYSTEMSの基地局を設置して検証環境を構築した。
左は、APRESIA Systems製のRU「ApresiaAERO-RU100」。
右はFLARE SYSTEMSの5Gコア一体型基地局「FW-L5Gシリーズ」
ローカル5G端末は形状・用途の異なる6種類を用意した。
スマートフォンは、日本のローカル5Gで使用するバンドn79(4.9GHz帯)をサポートする「ASUS Smartphone for Snapdragon Insiders」とFCNT製の2機種。また、NEC製の法人向けPC「VersaPro」1機種も使用した。
そのほか、NECマグナスコミュニケーションズ製のIoTゲートウェイ「FG900CS」、京セラ製モバイルルーター「K5G-C-100A」、そして、FWA(固定無線アクセス)サービスにも使われるノキア製のCPE「Nokia FastMile 5G Gateway 3.2 日本モデル」を持ち込んで性能を検証した。
合同検証会で使用したローカル5G対応端末
一部の基地局と端末で接続できない状況が発生したものの、ほとんどの組み合わせで問題なく接続を確認。基地局と端末の製造元が異なるマルチベンダー環境でも相互接続が可能なことがわかった。
これを受けて、ローカル5G普及研究会 技術WG主査を務める藤本幸一郎氏(NEC デジタルネットワーク事業部門 上席テクノロジー・エバンジェリスト)は、「これだけ多くのベンダーの端末が接続でき、ある程度のスループットが出ることが見えてきた」と話し、ローカル5G普及に向けた環境が整いつつあることへの手応えを示した。