<特集>6Gへ - Beyond 5Gへの挑戦5G evolutionの全貌(前編) Release 16の主要トピック

6Gへとつながる「5G evolution」。その進化の方向性とはどのようなものか。3GPPにおいて進められている5G標準化の最新動向を見ながら、6Gへの道筋を紐解いていこう。前編では3GPP Release 16での主要トピックを見ていく。注目は産業IoTとローカル5Gのサポートだ。

日本で間もなく始まる商用サービスも含め、我々が現時点で使える5Gは完成形には程遠いものだ。

“完全版”の5Gは、2021年半ばの完了が予定されているRelease 17(以下、R17のように記載する)で標準仕様が固まる。その前段に当たるR16の仕様は、この3月末に標準化作業が完了した後、携帯電話事業者のネットワークへ適用される。R17の完全版5Gが我々の前に姿を表すのは、早くとも2022年以降となろう。

5Gを高度化するための技術検討はR18以降も継続され、6Gへとつながっていく。ドコモやエリクソンは、この流れを「5G evolution」と呼んでいるが、この進化は、どのような方向性で進んでいくのか。今回の前編ではR16仕様の内容、次回の後編では今後議論が進むR17の検討項目を主軸に見ていく。

なお、上記のスケジュールはあくまで予定である。現在、新型コロナウィルス感染拡大が3GPPの標準化作業にも影響を及ぼしており、会合のキャンセルも相次いでいる状況だ。当初予定よりもずれ込む公算が大きい。

5G網内にLANを作るR15で仕様化された初期の5Gでは、eMBB(enhanced Mobile Broadband:高速大容量通信)と一部のURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:超低遅延・高信頼通信)を主眼とした標準化が進められた。

R16では、産業IoTを主要な用途とするURLLCの拡張が主軸となっている。ただし、その他にも多くの機能拡張が行われており、初期の5Gの課題であるカバレッジの改善等を目的とした新機能も追加された。

産業IoTをサポートするためのURLLCの拡張については、データの重複送信や接続の冗長化、0msハンドオーバーといった信頼性を高める機能、エンドツーエンドの遅延時間を短縮する機能等が追加された。さらに、工場における機械制御等で必須となる時間同期の仕組みとして、Time Sensitive Networking(TSN)通信も盛り込まれている(図表1)。

図表1 5GとTSN(Time Sensitive Networking)のインターワーク(クリックして拡大)

図表1 5GとTSN(Time Sensitive Networking)のインターワーク

ノキアの千葉恒彦氏が、このTSNとともにR16の目玉に挙げるのが「5G LAN」だ。

5G LANとは、5Gコアネットワーク機能の一部であるUPF(User Plane Function:ユーザーデータのパケット転送)をゲートウェイ装置等に内蔵してローカル環境に設置し、端末とUPF間で折返し通信を行うものだ。コアネットワークを経由しないLAN環境が実現できる。一部の端末のみLAN通信を行い、他の端末はコア網と通信させるような制御も可能だ。

IoT関連では、測位機能である「NR Positioning Support」も追加された。

LTEにも測位機能はあるが、NRではより帯域幅の大きい測位用参照信号が利用できる。これに、ビームフォーミングによる空間把握やGNSS(全球測位衛星システム)など複数の測位技術を組み合わせることで高精度な測位が可能になる。遅延も短縮するため、機械制御や安全運転・自動運転支援といった産業分野への応用が期待できるという。

月刊テレコミュニケーション2020年4月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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