ビジネススピードが加速している現在、業務の自動化はあらゆる企業が取り組むべき重要項目となっている。しかし、ネットワーク領域の自動化はなかなか進んでいない。ネットワークは専用機器がいまだ主流であり、ベンダーごとに異なる知識・ツールで設定する必要があるからだ。そのため運用が属人化しやすく、変革が難しい。
一方、2010年頃からNFV(ネットワーク仮想化)技術が登場し、ネットワークをソフトウェア的に制御する「SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)」が普及してきている。NFV/SDNの活用により、設計当初からの自動化に取り組んでいた、いわば自動化の上級者と呼ぶべき企業では、属人化などの課題をある程度乗り越えて、ネットワークの構築や設定などの自動化に成功しているはずだ。
だが、こうした上級者の企業においても、現在は自動化による成果が頭打ちになってきている。
というのも、設定作業などはネットワークの設計・運用において、業務の一部に過ぎず、大部分の時間は設計書やパラメータシート、手順書の作成とそれらの検証・確認など、ドキュメント作成と人同士のコミュニケーションに費やされているからだ(図表1)。
図表1 ネットワーク自動化が進まない原因
レッドハットが開催するワークショップで調査したところ、ITインフラ業務において担当者が実機を触わっている時間は、全体工程の1割から2割ほどに過ぎない。ネットワーク機器ベンダーなどが提供する管理ツールを用いれば、各機器のコンフィグ変更などはGUI操作で可能で、いちいちコマンドを組み合わせたスクリプトを作成して流し込む必要はないが、こうした作業が自動化できたとしても、その意思決定に至るまでの膨大な打ち合わせや確認は効率化できず、この1~2割部分を効率化するに留まってしまうのだ。