無線LANやBluetoothなどの様々な無線通信システムの導入が進む製造現場。この通信品質を安定化させるため、複数の無線システム間での調整を行い、干渉を抑制する「SRF無線プラットフォーム」の技術仕様を策定しているのがフレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)だ。
情報通信研究機構(NICT)と製造業7社により2017年に設立されたFFPAは2021年12月に、SRF無線プラットフォームの通信規格に準拠する無線機器を認定する認証プログラムを開始した。WTP2022のFFPAブースでは、SRF無線プラットフォームの仕組みや機能等を紹介するとともに、FFPA参加企業が開発したゲートウェイ製品の試作品も展示。説明員によれば、「2022年内には商用製品が発売される」予定だ。
工場内を飛び交う無線を“交通整理”
SRF無線プラットフォームとは、異種/異ベンダーの無線通信システムが混在する環境においてシステム間での調整を行い、協調制御を行うことで干渉を抑制することを目的としている。工場内を飛び交う無線電波の“交通整理”を行うイメージだ。
工場で使われる無線システムは、複数の規格・世代が混在することが珍しくない。異ベンダーのシステム間は協調せず、通信トラフィックが増えれば、自ずと干渉が増え、通信品質が劣化する。このリスクを抑えるためには、工場全体で電波の状態を可視化し、適切に各システムを制御する統合管理が必要だ。
SRF無線プラットフォームの構成要素
SRF無線プラットフォームは、この可視化と協調制御を実現するための技術仕様だ。各無線システムに制御ポリシーを提供する“司令塔”役のField Manager、その制御ポリシーに基づいて自律的に無線を制御するSRF Gateway/Device、そしてSRF非対応製品を検知するSRF Sensorで構成される。SRF Gateway/DeviceやSRF Sensorから収集する情報を基に、Field Managerが、アプリケーションの要求品質を満たしつつ電波干渉を回避する。
FFPAは2021年10月にこの技術仕様を一般公開。12月から開始した認証プログラムでは、技術仕様に準拠していることを確認する適合性試験と相互接続試験を行う。
SRF Gatewayの試作品。左はNEC製、右は富士通製
NECと富士通がSRF Gatewayの試作品(上写真)を開発しており、いよいよ普及に向けた具体的な動きが始まったところだ。
また、これと並行してFFPAでは、技術仕様のさらなるアップデートも続けている。5月24日には、SRF無線プラットフォームを第5世代移動通信システム(5G)に対応させるための技術仕様Ver.2.0を策定した。
現状のVer.1.0は、無線LAN等の免許不要周波数帯の無線システムを対象にしているが、Ver.2.0では、免許帯である5Gおよびローカル5Gとの協調制御に対応した。
また、マルチホップ通信機能も追加している。SRF Gateway間の無線接続や、SRF Deviceを経由したSRF Gateway同士の接続が可能になり、無線カバレッジを容易に拡大することが可能になる。