HAPSの未来はどうなる ソフトバンクが気球のLoonの特許取得

Alphabet傘下のLoonが事業継続を断念した。200件の特許をソフトバンク子会社のHAPSモバイルが受け継ぐ。HAPS市場の先人であるLoonの歩みを振り返りながら、今後のHAPS市場の動向を探る。

WRC23後の加速目指せ今後のHAPSアライアンスの活動で重要な意味を持つのが、ITU-Rで2023年に開かれる世界無線通信会議(WRC-23)だ。700~900MHz帯、1.9GHz帯、2.5GHz帯と、HAPSに利用可能な周波数の拡大が議題に上がっている。

WRC-23での承認に向けては、HAPSの信頼性を証明しなくてはならない。そのために必要な作業の1つが、成層圏から地上に向けて発信された電波が届く範囲などを正確に推定する方法だ。ソフトバンクとHAPSモバイルは、高高度における電波の干渉量の推定する新たな電波伝搬モデルの作成・提案などの活動を行っている。2021年10月には大気ガスの吸収や降雨などの対流圏における損失などの計算にとどまっていた既存のモデルに加えて、季節による植生の変化に応じて損失推定を行うモデルを開発・提案したほか、屋内に電波が侵入した際の減衰を推定するためのパラメーターの追加など、さまざまな要因のモデル改善・データ提供などを行った。その結果、このモデルは国際標準化を達成しており、今後のITU-R勧告で発行される見込みだ。

また、ネットワークだけでなく航空機のルール整備にも取り組んでいく。「NASAなど、無人航空機の安全管理ルールを策定する機関に必要な情報を提供していく」(湧川氏)

ソフトバンク テクノロジーユニット 先端技術開発本部 本部長 兼 HAPSモバイル 取締役 兼 HAPSアライアンス 理事 湧川隆次氏

ソフトバンク テクノロジーユニット 先端技術開発本部 本部長 兼 HAPSモバイル 取締役 兼 HAPSアライアンス 理事 湧川隆次氏

国内のHAPS市場はまだ立ち上がっていない。「ビジネスモデルもはっきり見えておらず、想像もしていなかった仕組みが主流になるかもしれない。そうしたときでも、多くの知財を持っているため、柔軟な戦略がとれる。場合によっては市場拡大のため、特許を公開するという戦略もとれる」と湧川氏は話す。Loonが撤退した後も、彼らの残した知恵や努力は市場の中できっと活用されていくことだろう。

月刊テレコミュニケーション2022年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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