NTTが日本初のスマートシティ国際認証取得、名古屋東桜街区でIOWN技術を活用

NTTグループが名古屋市で進める街づくりプロジェクトが、スマートシティ化の取り組みを評価する国際規格「ISO37106」認証を日本で初めて取得した。街の安心安全や環境負荷低減、快適な生活を支えるアプリケーションサービスの基盤として、IOWN構想の一部である「街づくりDTC」を活用する。

ビルの入口ゲートを顔認証で通ると、オフィスのある階へ向かうエレベーターに誘導され、ボタンに触れることなく自動的に運んでくれる。昼休みが近づけばAIマネージャーが、混雑に合わず、かつ好みにあったレストランとメニューを提案。しかも、警備ロボットがビル内の異常をリアルタイムに検知してくれるから、安心して働ける――。

そんなデジタル技術が満載の次世代スマートビルが、2022年2月に竣工した。名古屋市東区東桜一丁目の「アーバンネット名古屋ネクスタビル」(以下、名古屋ネクスタ)だ。NTTアーバンソリューションズとNTT都市開発が「次世代型先進オフィスビル」の第1号物件として手掛けたものである。

冒頭のように快適かつ安全に働けるようオフィスワーカーを支援する機能が稼働するほか、環境負荷低減に向けて、人数・人流の予測に基づいて空調を制御することで省エネも実現。さらに、天候・曜日、飲食店への来店数実績から飲食店の需要を予測するフードロス削減の仕組みも実装を検討中だ。

ISO37106認証を取得した「東桜一丁目街区」の概要
ISO37106認証を取得した「東桜一丁目街区」の概要

NTTアーバンソリューションズはこの新ビルと同一街区にあるアーバンネット名古屋ビル、商業施設Blossaを一体的に運営し、「東桜街区」のスマートシティ化を推進している。ワーカーや住民向けのアプリケーションサービスは、NTTグループが開発したデジタル基盤「街づくりDTC」をプラットフォームとして提供されており、これを複数のビル・施設に展開。街区全体で人流やエネルギー消費を最適化する取り組みも今後進めていく。

このプロジェクトが日本国内で初めて、スマートシティを構築する際のプロセスを評価する国際規格「ISO37106」の認証を取得した。これを受けて、NTTグループは2022年2月24日にオンライン記者説明会を開催。その意義と、今後のプロジェクトの展望について説明した。


ISO30716認証の授与式の様子。左は認証機関であるBSIの日本法人BSIジャパンの漆原社長、
右はNTTアーバンソリューションズの中川社長

ISO37106は「自治体にもDVデベロッパーにもメリット」
NTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニット マネージャーの古謝玄太氏によれば、ISO37106とは2018年に国際規格化されたもので、「スマートシティ化を進める際のベスト・プラクティスを提示している。都市やコミュニティの管理運営体制を構築する際のプロセスについて、このベスト・プラクティスにどれだけ対応しているかを評価する規格だ」。

ISO37106の概要
ISO37106の概要(クリックして拡大)

プロセスの評価方法は4つの大項目(上図表のA~D)で構成されており、例えば、「A:提供の原則」に関しては、街づくりのビジョンを明確に定めること、市民中心型であること、デジタルを活用すること、そしてオープンで協調的であることが求められているという。

これらの項目ごとに、スマートシティの「あるべき管理運営の仕方」が定義づけられ、その対応度合いに応じてレベル1から5までの5段階で評価。東桜街区の取り組みは、レベル3を取得した。なお、ISO37106認証は、韓国・世宗市を皮切りにこれまで10都市が取得。東桜街区は世界で11番めとなる。

このISO37106認証取得の意義について古賀氏は、「自治体にもデベロッパーにもメリットがある」と話した。

自治体においては、「SDGsに対応する都市であることなど、自治体のプレゼンス・ブランド力向上により実利が取得できる」と指摘。「国プロジェクトの採択に有利になる可能性がある」ことなどをメリットに挙げた。

デベロッパーについては、テナントの誘致において有利に働くことや、国際基準の再開発ノウハウを他のプロジェクトへ展開できること、不動産価値の向上などが期待できるという。

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