米国発、次世代GPSが日本上陸 気圧センサーと地上局で位置情報を「3D化」

全米4400都市をすでにカバーする「次世代GPS」が存在する。屋内対応・階数特定・高セキュリティの3つが特徴だ。日本でも、この次世代GPSのパイロットサービスが9月にスタートしている。

位置情報に革新をもたらそうというベンチャー企業が現れている。

日本での舞台は900MHz帯。デジタルMCAの段階的移行に伴い、空き地となる予定の845~860MHz及び928~940MHzのサブGHz帯である。

802.11ah推進協議会やWi-SUN Allianceなどに混じって、この跡地利用に名乗りを上げたのが、「3次元屋内外測位システム」を提案したMetComだ。「GPSが抱える課題を解決する。最終的にはGPS2.0まで行きたい」と同社の荒木健吉氏は意気込む。

MetCom取締役の荒木健吉氏
MetCom取締役の荒木健吉氏。MetCom入社以前は、
ウィルコム、ソフトバンクで長年IoT/M2M事業に携わった

GPSの弱点を解決舞台は変わって、米サンフランシスコ・ベイエリア──。シリコンバレーも含む同地で、今年ナスダックへ上場予定の注目企業、NextNavがある位置情報サービスを商用提供している。

GPSの電波は、屋内や地下街までは届かない。また、建物内で特に重要な高度、すなわち「今、何階にいるのか」の把握も困難だ。

NextNavのサービスは「Metropolitan Beacon System(MBS)」と名付けたテクノロジーで、こうしたGPSの弱点を解決した。用いるのは2種類の設備だ。

まずは水平方向(XY軸)の測位のための基地局である(図表1)。基本的な原理はGPSと同じ。ただ違うのは、GPSが上空2万kmの衛星から信号を送るのに対して、MBSは地上から信号を送信する点だ。このため電波の強さは10万倍で、屋内や地下街にも浸透する。サブGHz帯の免許を持つNextNavは、ベイエリアの中心部全域2300k㎡超を100局以下の地上局でカバーしている。

図表1 地上から信号を送信することで屋内や地下街にも浸透
図表1 地上から信号を送信することで屋内や地下街にも浸透

もう1つは、垂直方向(Z軸)の測位に用いる気圧センサーだ(図表2)。ビル屋上に高精度な気圧センサーを設置。スマホ内蔵の気圧センサーとの値の差から高度を割り出す。

図表2 気圧センサーを用いて高度を測定

図表2 気圧センサーを用いて高度を測定

MBSの屋内測位精度は、水平方向が誤差7~10mと、GPSによる屋外測位と同程度。垂直方向は誤差2~3mで、階数を間違えることはほぼない。MBSに対応した専用端末を持って、ショッピングモールの中を歩けば、自分が何階のどこにいて、近くにはどんなショップがあるのか、ナビゲートしてもらいながらショッピングを楽しめる。

NextNavを主要株主に持つMetComは、このMBSを日本で展開しようとしている。

月刊テレコミュニケーション2021年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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