ドコモがCFM・FinHackを実践、60%のコスト減も
記者説明会では、このプログラムを活用してコスト削減を実現した事例として、NTTドコモの取り組みが紹介された。
同社 ネットワーク本部 サービスデザイン部長の伊藤孝史氏によれば、ドコモのAWS利用は約10年前に遡る。
「東京リージョンができる以前に、R&D部隊が検証で使い始めた。その後、しゃべってコンシェルなどのサービスをAWSで展開してきている」
現在では、社内向けも含めて200のサービスがAWSで稼働中だ。
NTTドコモ ネットワーク本部 サービスデザイン部長の伊藤孝史氏
アカウント数は2016年から5年間で約5倍に増加し、現在1000を超えている。「基本的に従量課金制で使っている。AWSにはよい面がたくさんある半面、いろいろなメンバー・組織が使うことで、コストの管理や意識付けがしにくい。コスト最適化の対策もプロジェクトによってばらつきがある」のが課題だった。
対策として、社内に「クラウドCoE」と呼ぶ活動を立ち上げてコスト最適化等に取り組んできたが、「限界もあり、AWSのプログラムを活用した。両輪でコストの最適化にチャレンジしている」と伊藤氏。2020年度にはCFMおよびFinHackを2回実施した。
NTTドコモが抱えていたAWSコストの課題
その結果、複数の取り組みで具体的な効果が得られたという。CFMの効果として挙げたのが、下記の「事例1」だ。
ドコモでは検証環境および商用環境でAWSを利用している。
「オンプレミスに近いかたちで潤沢にAWSを使って開発してきたが、オンプレと同じような考えでやってしまう。このコストをCFMで可視化・分析することで、検証環境についてはスタート時点と比べて60%もコストを落とせた」
商用環境に関してもアクティブユーザー数が年々増加するなかで、コスト削減を実現できたという。
CFMの活用による効果の例
ポイントとして伊藤氏が強調したのが、可視化の重要性である。ドコモの場合、EC2にかかるコストが全体の45%を占めることがわかり、ここを重点的に攻めた。
EC2インスタンスの利用に関して、「最小限のスペックと+アルファを使う。夜間・土日は自動停止する。(大幅な値引きが適用される)スポットインスタンスの導入にも着手した」ことが、上記の成果につながった。
そのほか、ピーク時に合わせて常時インスタンスを稼働させていたサービスを見直し、トラフィック傾向に合わせて稼働数のスケジューリング等を実施した事例では、改善前と比較してECS(コンテナ管理サービス)コストがトータルで48%も削減。
また、開始当初は商用維持環境を常時起動していたサービスについて、使用しない時間帯を停止することで35%のコストを削減した事例などを紹介した。
こうした成果を受けて、ドコモでは各組織が継続的にチェックすべき項目を設定し、社内全体にコスト最適化の意識付けを行っていくほか、オンラインで実施したFinHackを録画して社内で配信するなどの取り組みも行っているという。
ノウハウを社内に横展開することで、コストを最適化しながら「みんなでクラウドを使い倒す」環境を作っていきたいと伊藤氏は話した。