Gartnerは2021年8月4日、全世界における2021年の5Gネットワーク・インフラストラクチャの売上高が、2020年の137億ドルから39%増の191億ドルに達するという見通しを発表した。
成熟市場の通信サービス・プロバイダー (CSP) は、2020年から5Gの開発を加速させ、5Gは現在、無線インフラストラクチャの総売上高の約4割を占めている。無線ネットワーク・インフラストラクチャ市場で最も急成長しているセグメントだ(表参照)。
世界の無線インフラストラクチャ市場売上高予測 (単位:百万ドル)
無線インフラストラクチャ市場を構成するセグメントのうち、投資拡大の大きな機会をもたらすのは5Gだけで、4GまでのレガシーRAN (無線アクセス・ネットワーク) インフラストラクチャへの投資はすべての地域で急速に衰退しており、5G以外のスモール・セルへの支出は、CSPが5Gスモール・セルへと移行するにつれて減少する傾向にある。
CSPの5G売上高を地域別に見ると、北米では、ダイナミック・スペクトラム・シェアリング (DSS) やミリ波帯基地局の導入が進むこともあり、2020年の29億ドルから2021年には43億ドルに拡大するとみられる。
西欧では、認可型周波数、モバイル・コア・インフラストラクチャの近代化、規制プロセスの遵守を優先し、2020年の7億9400万ドルから2021年には16億ドルに増加する見込み。中華圏は世界の売上高シェア第1位を維持し、2020年に74億ドルであった売上高が2021年には91億ドルに達する見通しだ。
2024年までに、CSPの60%が世界の主要都市をカバーする5Gサービス商用化
商用化可能な5Gサービスを提供するCSPの割合は、2020年の10%から2024年には60%に拡大するとGartnerはみている。これは過去のLTEや4Gの普及率と同等であり、5Gへの投資は、2021年にLTEおよび4Gを上回る予想だ。
CSP間の競争の激化は、5Gの導入ペースを加速させている。新しいOpen RANとvRAN (仮想化RAN) のエコシステムは、現在のベンダー・ロックインを打破し、将来的にはコスト効率が高く俊敏な5G製品を提供することで、5Gの採用をさらに促進する可能性があるという。
アナリストでシニア ディレクターの瀧石浩生氏は次のように述べている。
「Open RANとvRANの商用化は少数の革新的なCSPによって始まったばかりだが、業界からの注目を集めており、5Gの将来的な成功には欠かせないもの。日本は5Gをリードする国の1つといえる。特に、CSPによるOpen RANおよびvRANの早期商用化、ならびに企業によるローカル5Gの導入が世界に先駆けて行われている。日本発のエコシステムが世界に影響を与える可能性があり、その動向を注意深く見守る必要がある。既に米国や英国のCSPが日系ベンダーを選定しており、こうした動きは今後も広がる可能性がある」