――6月の司馬聡氏の日本法人社長就任会見で来日されましたが、それから3カ月間で、御社の業績はどのように変化しましたか。
ケリー まず、第2四半期(6月末)の売上高ですが、前年同期比で47%増でした。この数字は無線LAN機器市場の上昇率を大きく上回っています。
また、6月時点ではワールドワイドで38カ国3000ユーザーでしたが、この3カ月で44カ国3500ユーザーにまで増えました。
このような急成長を遂げることができたのも、IEEE802.11nに他社に先駆けて着目し、積極展開してきたおかげであり、市場が急速に11nにシフトしていると言えます。
――そこまで急速に変化した要因は。
ケリー 昨年9月に11nの標準化が完成したことでしょう。当社のユーザーの例で言いますと、従来は大学や医療関係がメインユーザーでしたが、標準化がなったことで、保守的だった一般企業も積極的に導入を始めました。
――御社の11nビジネスの現状は。
ケリー 現在、出荷ベースで当社の製品の92%が11nです。一方、競合他社はかなり保守的で、当社の調べで彼らの11n製品の平均出荷率は38%に留まっています。
――これだけの差がついている要因をどう分析していますか。
ケリー 重要なポイントは、11nが非常に管理しにくい技術だということです。当社の技術の優位性は、複数のアクセスポイント(AP)を仮想的に1つのAPとして運用する「シングルチャネル」による仮想化です。従来のマイクロセルは、カバレッジホールが発生して複雑なサイトサーベイが必要になるなど課題がありますが、当社の技術なら簡単に対応できます。
――大学や医療関係以外にも急速に拡がっているとのことですが、導入が顕著な業界はありますか。
ケリー 物流、製造業、ホテル業界の3つです。物流と製造業は、高密度で安定性のあるネットワークへの要求が高く、他の業界よりも急速に導入が進んでいます。
ホテル業界は、特に高級ホテルでの導入が顕著です。従来は利用客もロビーで無線LANが使えればよいという程度でしたが、最近は客室や会議場などで高速かつ安定的に利用したいというニーズが高まっています。
北米以外の売上比率を5割に
――現在の御社の北米以外の売上比率は30%で、3年前から20%も拡大したそうですが、今後の目標は。
ケリー 将来的に北米とそれ以外の地域の売上比率をイーブンにしたいと考えています。これを実現するには、製品力だけでなく、チャネルパートナー施策も重要と考えています。当社のスキルと各パートナーのスキルをどう上手く組み合わせていくかがポイントで、それを実現するためのパートナープログラムを作成して、北米以外でのビジネスを拡大していきます。
――日本市場での目標は。
ケリー 個別の地域の目標は公表できませんが、当社は日本をアジアのビジネスのなかでも特に重要と捉えており、日本で成功したビジネスモデルをアジアの他の国々にも横展開しています。
11nへの注目度や移行も他の国よりも早いので、司馬社長のもと、日本独自のユーザーのニーズをいち早くキャッチアップして、製品や販売戦略に反映し、多くのビジネスチャンスを掴んでいきたいと考えています。