「5Gと6Gの間を埋める“5.5G”の存在が必要だ」
Beyond 5G/6Gへの議論が各地で始まっている中、ファーウェイ・ジャパン 標準化・事業推進部 事業戦略・レギュレーション ディレクターの朱厚道氏はこのように指摘する。
モバイルネットワークはおよそ10年周期で次世代規格へと進化してきた。しかし、必ずしも一足飛びに、次の世代へと進化したわけではない、その橋渡し的規格も存在した。例えば3Gと4Gの間には、3.5Gと呼ばれたHSDPA/HSUPAがあった。また、LTEは当初は4Gではなく、3.9Gと言われていた。
ファーウェイが提唱するように、5Gと6Gの中間に、いわゆる5.5Gなる規格が存在しても何ら不思議ではない。
朱氏は言う。5Gはそもそもバーティカル産業のためのモバイル規格を目指したものだが、実際の5Gは「バーティカル産業のニーズを必ずしも満たしきれていない」。そのため、「5.5Gの規格を対外的に推進しているのは当社だけかもしれないが、支持してくれる通信事業者は多く、チップベンダーや端末ベンダー等の賛同も得ている」。
5Gに3つの強化では、ファーウェイの描く5.5Gとは、どのような規格なのだろうか。「基本的には5Gの高速大容量、超低遅延、多数同時接続という特徴をさらに拡張するものになる」と朱氏は説明する(図表1)。
図表1 ファーウェイが6Gの標準化に向け想定するタイムライン
5.5Gの1つめの強化ポイントは上り速度の向上、「UCBC(Uplink Centric Broadband Communication)」だ。ファーウェイは、上り速度において10倍の帯域幅の確保を目標に掲げている。多数のIoTを活用する「Massive IoT」や複数の高解像動画をアップロードする必要があるユースケースなどで需要がある。
2つめの強化ポイントは、高速大容量通信と低遅延通信を両立する「RTBC(Real Time Broadband Communication)」だ。一定レベルの低遅延と信頼性を担保しながら、5Gの10倍の帯域幅を実現することを目標に掲げている。AR/VRなどの仮想現実を利用したアプリケーションで没入感を得るために必要になる。
3つめは、モバイル通信用の電波で、同時にセンシングも行う「HCS(Harmonized Communication and Sensing)」だ。電波は従来から物体検知や測位に活用されてきたが、基本的に高い周波数帯であればあるほど、高精度にセンシングできる。「現在5Gは71GHzまで利用できるように3GPPで標準化されている。71GHz帯のような高周波では、モノの形を相当正確にセンシングできる。障害物の検出も可能になり、ビーム制御も高度化できる。通信とセンシングの統合により、いろいろなサービスが可能になる」と朱氏は解説する。例えば、高精度な屋内測位や、コネクテッドカーやドローンの自律走行などのユースケースに寄与するという。
図表2は、ファーウェイが描く6Gまでの標準化ロードマップだ。同社は5.5Gの標準化作業に関する議論は、2022年ごろにスタートすると予想される3GPP Release18から始めるべきと考えている。「6Gの仕様が決まるのは2030年頃になるだろう。その間にも5Gは引き続き進化していく」
図表2 ファーウェイが公表している5.5Gの技術要件