ドコモの5G×MEC
NTTドコモ 法人ビジネス本部 ソリューションサービス部 NWカスタマイゼーション推進 担当部長の西田卓爾氏は、「国内初5G×MEC提供から1年、見えてきたこととドコモの今後の展望」という演題で、同社が提供する「ドコモオープンイノベーションクラウド」の紹介を中心に、MECとエヌビディアのテクノロジーの意義について語った。
ドコモオープンイノベーションクラウドはMECを活用したクラウドサービスだ。ドコモのネットワーク内にエッジクラウドを設置しているため、インターネットを介さずにアクセスできる。さらに、オプションの接続方式「クラウドダイレクト」を利用すれば、接続端末とクラウド基盤を直結して通信経路を最適化し、低遅延かつ高セキュリティの通信を可能にする。クラウドダイレクトに対応する拠点は東京・神奈川・大阪・大分の4箇所、非対応の拠点は西東京と栃木の2箇所に設置されている。
「ドコモオープンイノベーションクラウド」の概要
ドコモオープンイノベーションクラウドの提供開始からこの1年で、遠隔授業や高解像度の画像伝送、ARを活用した遠隔作業支援など、多くの具体的な取り組みやソリューションが誕生しており、報道発表まで至った実ユースケースは50件超にのぼるという。
「今後は、より多様なビジネスシーンに対応するため、5G基地局の展開やネットワークスライシングの実装を進めるのはもちろん、AIを活用して5G×MECの低遅延性をより高めていきたい。そのためにはGPUの活用が不可欠になる」と西田卓爾氏は展望を語った。
そしてGPUの活用例として、オープンイノベーションクラウドで提供する「ドコモ画像認識プラットフォーム」を挙げた。これは画像認識を行うための「学習モデル作成」とAPIを提供するクラウドサービスだ。ソリューション開発者は、画像データセットをアップロードすることで、用途に合わせた画像認識エンジンを簡単に作成、利用できる。これを使えば、例えばドローンから送信された映像をリアルタイムに分析し、異常検知するといったソリューションもより簡単に実現できる。
「ドコモ画像認識プラットフォーム」のイメージ
リモートレンダリングでVRプレゼンさらにドコモは4月から、ドコモオープンイノベーションクラウドのGPUのラインナップに「NVIDIA Quadro RTX 8000」を追加している。
R&Dイノベーション本部 イノベーション統括部 クラウドソリューション担当 担当部長秋永和計氏は、このRTX 8000と、VRのリモートレンダリングを行うためのSDKである「NVIDIA CloudXR」を活用した実証実験を紹介した。
近年、建築デザインのプレゼンでは、VRを利用するケースが増加しているという。しかしCAD図面から起こした高精細な3Dモデルのレンダリングを実行し、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に表示させるには、大容量のコンピューティングリソースが必要になる。このため、従来は高性能なノートPCなどとHMDを有線接続し、1人ずつVRを見せるほかなかった。
このレンダリング処理をノートPC からMEC上のvGPUに移動させ、レンダリング結果を5Gルーター経由でHMDに配信すれば、有線接続が不要になり複数人に同時にVRが見せられる。これを実現するため、RTX 8000が搭載されているサーバーに、複数のvGPUを展開し、その上でCloudXRを利用する構成にしたという。
構成イメージ
「このVRのユースケースは様々な分野に応用が効く。例えば服飾やキャラクターデザイン、製造現場におけるCAD、映像業界でも3Dグラフィックスのチェックなどに使うこともできる。ぜひオープンイノベーションクラウドと、CloudXRの組み合わせを色々な方に試してほしい」と秋永氏は話した。