ソフトバンクが法人戦略「見据えるは100兆円のDX市場」

3兆円の通信市場から、100兆円のDX市場へ――。ソフトバンクの宮川潤一社長は2021年6月1日に開催した説明会で、法人事業の方針についてそう述べた。デジタル化によって企業および社会の課題を解決するソリューション提案に、これまで以上に注力。「日本をDX先進国にする」との意気込みを示した。

「国内の通信市場は約3兆円の売上を3社で取り合っている状態。この視点を変えようと議論を続けてきた。今見据えているのは100兆円のマーケットだ」

法人事業に関する説明会の冒頭、ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏はそう切り出した。

法人事業が見据える100兆円市場
法人事業が見据える100兆円市場

製造や物流、医療、公共インフラなど、あらゆる産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)関連ソリューションの総売上高は、2030年には100兆円規模に成長するというのが宮川氏の見立てだ。「通信事業から企業のDX、将来的には社会のDXへとゲームチェンジしていこうというのが基本的な大戦略だ」

(左から)ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏、 代表取締役副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏、 常務執行役員 法人事業副統括 エンタープライズ/マーケティング担当の藤長国浩氏
(左から)ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏、
代表取締役副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏、
常務執行役員 法人事業副統括 エンタープライズ/マーケティング担当の藤長国浩氏

ビジネスモデル転換で「営業利益が4年で倍増」
実際、同社の法人事業は携帯電話/固定電話やインターネット接続サービスを軸とする“単体売り”から、通信ネットワークとアプリケーション/サービスを組み合わせて顧客企業の課題を解決する“ソリューション提供型”へとシフトしてきている。

これに伴い営業利益も順調に成長。2022年度は、2018年度の763億円からほぼ倍増となる1500億円の営業利益を見込む。

法人事業営業利益の推移
ソフトバンク法人事業の営業利益の推移

代表取締役副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏は、その転換点が2017年の「デジタルトランスフォーメーション本部(DX本部)」設立にあったと振り返った。

ソリューション提案型の営業スタイルへと転換するために、人材育成と組織変革に注力。業界・業種特化型のソリューション開発と提案を担う部隊を作り、「ビジネスモデルを転換することで、DXソリューションの売上が急成長した」(同氏)。売上高は、2015年度から2020年度まで5年連続で増加している。

この流れを加速するため、企業向けにはマルチクラウドの推進を軸に事業を展開していく方針を今井氏は掲げた。ノウハウや人材不足からクラウド導入に踏み切れない企業がいまだに多い現状を踏まえて、「ネットワークとセキュリティ、データセンターサービスも含めて、クラウドの導入から運用までフルサポートする」という。

B2B2Cモデルの展開において、YahooやLINEを顧客接点として活用
B2B2Cモデルの展開において、YahooやLINEを顧客接点として活用

このクラウドの展開において今井氏が特に強調したのが、「B2B2C」および「B2G2C」モデルの推進だ。後者のGとはガバメント、つまり政府や自治体のこと。企業がその従業員や顧客へ、政府/自治体が住民へサービスを提供する際に「Yahoo!やPayPay、LINEといった当社が持つタッチポイントを活用できる」強みを活かしていくとした。

続きのページは、会員の方のみ閲覧していただけます。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。