製造業やインフラ、運輸・物流、小売など、さまざまな業種・業界でニーズが高まっているIPカメラ。特にコロナ禍の今は、非接触で監視が可能になるソリューションとして注目を集めている。その一方でIPカメラの設置や映像を伝送するためのネットワークに課題を抱えている企業も多い。
アナログカメラからIPカメラへの置き換えも増えているが、監視する建物・敷地が広い場合は、伝送距離が最大100mというLANケーブルの制約により、実現できないケースも多い。「敷地内に光ファイバーを敷設すれば解決するかもしれないが、それにはかなり多くの時間とコストがかかってしまう。コストと時間をかけずに実現したいという相談が増えている」と語るのは、ハイテクインター 営業部 部長の森池信也氏だ。
そんな困りごとを解決するのが、同社が提供するPoE延長装置「MaxiiCopper Vi2400Aシリーズ」である（図表1）。LANケーブルの代わりに同軸ケーブルを利用してデータ伝送とPoE給電の距離を延長する装置だ。建物・敷地内に既存の同軸ケーブルが敷設されている場合、その両端に設置することで、PoEスイッチからIPカメラまで最長900mの電源供給とデータ伝送が可能になる。これならかなりの広範囲をカバーでき、IPカメラの設置場所に電源を別途用意する必要もない。
図表1 同軸ケーブルでPoE延長
1対1の接続だけでなく、複数ポートを持つ親機を使えば、1対N構成で通信を行うことも可能だ。
特徴はこれだけではない。動作温度は－40～75度までと厳しい環境にも対応。ITの知識がなくても物理的にケーブルを接続するだけで運用が可能になる簡便さも嬉しい点だ。サイズは名刺入れの半分ぐらいと非常に小型で、屋内用だけでなく「屋外用も用意している」（森池氏）。
「100m」はもう気にならない LANも電話回線も徹底利用!とはいえ、既設の同軸ケーブルがない場合はLANケーブルを敷設するしかない。ならば、100mごとにスイッチングハブを置いていく構成しかないのか。それだとスイッチの設置場所にも困るし、通信に不具合が起こった時の切り分けも難しくなる──。
こんな悩みにもハイテクインターは応えてくれる。解決策は「MaxiiCopper Vi2300Aシリーズ」だ。先述のVi2400A同様、LANケーブルの両端にこの装置を設置すると最大900mまで伝送距離を延ばせる。森池氏によれば、「東京オリンピック関連の施設に採用されるなど、すでに導入実績がある」という。
古い建物やマンション等では、新たに光ファイバーを敷設できない物件も多く、このようにLAN/同軸ケーブルを有効活用することで、低コストかつ短期間にIP映像伝送ネットワークを構築することが可能だ。
そのような既存物件では、LAN/同軸ケーブルだけでなく既設の電話線を活用する手もある。ハイテクインターが提供するVDSLモデム「ABiLINX 1002」だ。これも、電話線の両端に設置することで実に最大3kmまでの範囲をカバーできる。コストも工事も最小限で済み、取り付けも簡単。LINEポートを8個、24個搭載したモデルを使えば、「1対Nで通信ができる」とプロダクト技術部 部長の川辺治郎氏。伝送速度は最大150Mbpsと昨今の5GやWi-Fi6などと比べると遅いものの、活用範囲は意外と多いはずだ。
より広帯域なネットワークが必要なケースなら、G.fast規格を採用したモデル「ABiLINX 4116/4100」が適する。電話回線で最大900Mbpsの高速通信を可能にする製品だ。「映像伝送のラストワンマイルのニーズはまだまだ続く。4K/8K映像伝送のニーズにも対応していきたい」と川辺氏は語る。
なお、ノイズや干渉の多い工場や高速道路、鉄道といった環境下で、電話回線を使って長距離伝送を実現したいというニーズには、SHDSLモデムの活用がお勧めだ。複数ペア回線を束ねて速度を高速化するボンディング技術に対応した機種も用意している。
