「データドリブンな社会を実現していくためには、ヒトにまつわるデータをもっと収集していく必要がある」
都市、工場、クルマなど、世の中には「エッジデータ」が生まれる現場が数多く存在する。私たち“ヒト”もその1つといえるが、そのヒトに関するデータが足りないと強調するのは、NEC デジタルプラットフォーム事業部 技術主幹の岡山義光氏だ。
「従来はモノのデータが主だった。今後はヒトにまつわるデータも合わせて、統合的に処理していくことが重要になるが、それを担うのがエッジコンピューティングだ」
NEC デジタルプラットフォーム事業部 技術主幹 岡山義光氏
耳で常時本人認証岡山氏の言うヒトにまつわるデータとは、人間の生体情報や五感情報のことである。現在でもスマートフォンやスマートウォッチなどで一部の情報は取得できているが、まだまだ十分ではない。
常に装着しており、なおかつ詳細な生体・五感データを取得できる新たなエッジコンピューティングデバイスが必要になるだろう。
その答えの1つとしてNECが現在開発を進めているのが「ヒアラブル」だ。耳装着型のウェアラブルデバイスで、センサーとコンピューティング機能を一体化している(図表1)。
図表1 ヒアラブルのイメージ図
ヒアラブルでセンシングできるのは、装着者の体温や姿勢、位置情報などだ。
例えば、作業現場で活用すれば、作業員の体調や転倒などを検知できる。将来的には、脈拍の動きや声のトーンから感情をセンシングすることも計画しているという。
また、大きな特徴の1つとなっているのが、NECが独自開発した耳音響認証技術の搭載だ。
静脈や虹彩と同じように、耳の穴の反響音特性は1人ひとり異なっている。ヒアラブルは、これを本人認証に活用する。人間の耳には聴こえない音をデバイスから発し、その反響音の特長量の個人差を利用して本人認証する。
「顔認証の場合、カメラの前に自分の顔を持っていかなければならない。しかし、ヒアラブルなら装着している間、常時認証できる。ある意味、自分自身がカギになる」
つまり、ユーザーに何も意識させることなく、いつでも本人認証が行えるのだ。
すでにクルマのカギやキャッシュレス決済など、様々なユースケースでの活用が具体的に検討されているという。