“スマート工場”に最適なネットワークをグローバルに普及させていく――。
産業用ネットワークの新規格「CC-Link IE TSN」の仕様策定を発表するにあたって、CC-Link協会(CLPA)の事務局長を務める川副真生はそう述べた。
CC-Linkは、製造現場におけるプロセス制御等に用いられるオープンな産業用ネットワーク規格だ。複数の規格があり、情報系システムとの間でのデータ伝送を行うために、イーサネットベースの「CC-Link IE」(産業用イーサネット)が利用されている。
今回、新たに仕様が策定されたCC-Link IE TSNは、標準イーサネット規格を拡張した「TSN(Timee Sensitive Networking)」技術を産業用イーサネットに適用したものだ。FA(ファクトリーオートメーション)とITの融合を促進するともに、従来のCC-Link IEの性能・機能も大幅に強化されるという。
発表会にはパートナー企業も多数参加した
この新規格に賛同し、対応製品の開発を進めるパートナー企業は現在53社。2019年には、CC-Link IE TSNに対応したハードウェア/ソフトウェア製品が市場に投入される予定だ。
1つの幹線で多種多様なネットワークを混在運用
CLPAのテクニカル部会長を務める有馬亮司氏によれば、CC-Link IE TSNが必要とされた背景は大きく2つある。
CC-Link IE TSNが求められる背景
1つが「FAとITの融合」だ。IPネットワークの世界には、様々な用途・目的に使われる汎用的なネットワークであるイーサネットがあるのに対して、「OT層では、それぞれ異なるネットワークが用いられており、それが混在している」(同氏)。運用が複雑化していることに加えて、IoTで不可欠となるIPネットワークとの連携・融合も妨げられている。
もう1つが「高速・大容量通信、高精度同期」だ。製造業の現場で用いられるデータが大容量化しており、これを効率的に伝送できるネットワークが求められている。合わせて、産業用機器をコントロールするために高精度な時刻同期が必要となる。今後の産業用ネットワークは、「これらの要素を融合して対応する必要がある」と有馬氏は述べた。
そこでCLPAが採用したのが、標準技術である「TSN」だ。時分割方式によってリアルタイム性を実現する、イーサネットの拡張技術である。CC-Link IE TSNやTCP-IP、その他のネットワークのプロトコルを、時間帯を区切って同一ネットワーク上で混在させることができる。
CC-Link IE TSNのコンセプトと特長
これにより、従来は複数のネットワークで構成されていたITシステムやFAのネットワークを「混在させて、1つの幹線ネットワーク上で同時に動かせるようになる」(有馬氏)。システム構成の自由度が向上するほか、配線コストの削減にもつながるという。
なお、ベストエフォート型の通信と、高いリアルタイム性が求められる制御通信が混在しても、優先制御により後者のリアルタイム性を保証する。制御通信には影響を与えず、汎用的なIP通信機器を活用することが可能だ。FAとITシステムをシームレスに連携させ、製造業における多彩なアプリケーションを活用することが可能になるという。