ソフトバンクがIoT向け新技術「NIDD」――IPアドレスを使わず通信

ソフトバンクは2018年9月28日、IoT通信規格NB-IoT向けの新技術「NIDD(Non-IP Data Delivery)」の試験サービスを開始すると発表した。

NIDDは、今年6月に3GPPで標準化が完了したばかり。インターネットプロトコルを使わず、IPアドレス不要の制御メッセージにデータをのせて送受信を行うため、IoTデバイスが悪意ある攻撃を受けるリスクが低くなり、セキュアな通信を可能にする。

NIDDのシステムイメージ

IoTデバイスを狙った攻撃は年々増加しており、IoTに特化したマルウェアによる大規模感染も頻発している。ソフトバンク代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏は「マルウェアに感染すると、IoTデバイスが攻撃側になってしまう。NIDDはセキュリティをさらに向上させ、IoTの課題を解決できる」と語った。

ソフトバンク代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏

また、IPヘッダーなどの情報が削減されることで、通信に必要な電力を抑制する。IoTデバイスは現状、2~3年で電池の交換が必要になるため、間欠的な信号受信によって消費電力を低減するeDRXや、プロトコルの最適化によるデータ量の削減で10年持たせようとしている。これに対し、NIDDは電力の消費を抑えて電池の持ちを良くする。データ量削減の二次効果として、通信の成功率が高まり、通信エリアの拡大にもつながるという。

さらに、ネットワーク設定や証明書登録などの初期設定作業が不要で、電源を入れるだけですぐに利用することができ、端末の大量展開が容易になる。

これらの特長から、「NIDDはIoTの最終形。NB-IoTはNIDDに対応してようやく完成であり、普及が始まる」と宮川氏は述べた。

NIDDは3つの特長から、IoTの課題を解決するという

ソフトバンクでは、農業における家畜のバイタルデータやビニールハウスの温度管理、水道メーターや街灯など屋外インフラでの活用を想定している。 試験サービスでは水ingや第一環境と約半年にわたり実証実験を行い、来春を目途に正式サービスを開始する予定。

NIDD対応端末

「NTTドコモやKDDIにも早く導入してもらいたい。そうすれば、国内でエコシステムができあがり、世界に打って出るデバイスメーカーやベンチャーが出てくるだろう」と宮川氏は期待をにじませた。

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