ここ数年、OTTが利用するオープンな技術を通信事業者が採用する動きが加速している。SDNやNFVがその代表例であり、最近では、搭載するOS/ソフトウェアを柔軟に選べるホワイトボックススイッチの導入を検討する通信事業者も出てきた。
その狙いは、特定ベンダーの製品・技術への依存度を下げ、汎用ハードウェアとソフトウェアを組み合わせてインフラを構築・運用することでコストを削減し、併せてOTTのような柔軟性と拡張性、俊敏性を獲得することにある。
データセンター内から始まったこのオープン化は今や、モバイルネットワークにも波及しようとしている。
仕掛け人はフェイスブック注目すべき動きが2つある。
1つは、フェイスブックが主導する「Telecom Infra Project(TIP)」で開発が進む無線通信プラットフォーム「OpenCellular」だ。TIPは通信インフラのオープン化とコモディティ化を目的とし、100以上の企業・団体が参画。NTTやKDDI、ドイツテレコム、テレフォニカ等の通信事業者も名を連ねている。
もう1つは、フランスの大学院大学EureComが立ち上げたOSSプロジェクト「OpenAirInterface(OAI)」だ。汎用プロセッサ上で動作するOSSで無線ネットワークを実現することを目的とする。TIPに比べると小規模だが、ノキアのベル研究所、中国TCL、仏オレンジ、富士通等がコアメンバーを構成し、2017年後半にはシスコシステムズとサムスン電子も加わった。
図表1 セルラーネットワークのオープン化を目指す2つのプロジェクト
OpenCellular、OAIともにハードウェアとソフトウェアの設計・開発が活発に行われており、それらを用いたフィールドトライアルも実施されている。実用化されれば、通信業界に与える影響は大きい。
まず、キャリア向けインフラ市場の活性化が期待される。新規参入が促進され、インフラコストの低廉化が見込める。
IoT普及の後押しにもなる。
IoT向け通信サービスはスマートフォンに比べて1加入当たりの収益が小さく、それが通信事業者の投資を妨げる要因になる。設備コストの低減は、その解決につながる。
また、これまでは通信事業者が構築・運用するものだったセルラー網の“民主化”も期待できよう。免許不要周波数帯を使ってLTE網が構築できるMulteFire等を使って、通信事業者以外が「自営型LTE」を作ろうとする動きが起きつつあるが、その設備も安価に調達できるようになる。