――デジタル技術が社会に与えるインパクトが、かつてなく大きくなっています。KDDIグループの研究開発をリードする中島所長の目には、デジタル変革によって今後、世の中はどう変化していくと映っていますか。
中島 大きく2つの方向性があると考えています。1つは、バーチャルとリアルが相互に進化していくのではないかということです。
例えばモバイル決済サービスのAlipayやWeChat Payが普及する中国では、今までの現金から「電子マネーが簡単で便利でいいよね」という社会に急速に変わってきています。リアルでなくても済むものがバーチャル化していく“リアルのバーチャル化”が進展しています。
また、“バーチャルのリアル化”も進んでいます。ネットショッピングを例にとると、現在は多くの場合、画像とテキストがあるだけです。しかし今後は、バーチャルでも店員と話しながら買い物できたり、VR的な世界も含め、どんどんリアルに近付いていきます。
――もう1つの方向性は何ですか。
中島 自動化の拡大です。自動運転車で培われた技術が、農業や漁業、建設業など様々な領域に波及していくでしょう。
自動運転に何が必要かというと、①画像やセンサーによる状況認識と位置の把握、②障害物を避けるなどの判断、③それに合わせて運転制御するという3つぐらいのステップがあります。
こうした一連のステップは、別の用途にも使えます。例えば、農業において障害物を避けながら畑を耕して種を蒔くなど、今まで人手でやっていた3K的な仕事がどんどん楽になるでしょう。従来なかなか実現できなかった世界が、自動運転車を1つのきっかけに、一気に広がると見たほうがいいと思っています。
AIスピーカーもそうです。現在のAIスピーカーはQ&A型ですが、今後は双方向の対話ができるようになります。すると、生活・介護支援ロボットなどにもつながっていきます。