NTTは“ムーンショット”に挑むカンファレンスは、NTT 常務取締役 技術企画部門長の小林充佳氏による「2020に向けたNTTグループの取り組み」と題した基調講演で幕を開けた。
講演の冒頭、小林氏は、タクシーの配車サービスとともに一般人が自家用車を使って他人を運べる仕組みを提供している「Uber(ウーバー)」、宿泊施設・民宿の予約仲介を効率的に行っている「Airbnb(エアビーアンドビー)」などのデジタル・エコノミーが、米国で爆発的な広がりを見せ、既存のビジネスに大きな影響を及ぼすようになっていることを紹介。世界的なトレンドとなりつつある、この「デジタルトランスフォーメーション(ICTによる事業構造・業務プロセスの変革)」の波に対処するためには、日本企業も従来の守りのIT投資から、積極的にビジネス・顧客の拡大を目指す「攻めのIT投資」への転換を迫られていると指摘した。
NTT 常務取締役 技術企画部門長 小林充佳氏 |
小林氏は、こうした新たなビジネス環境に対応すべくNTTグループはB2B2Xモデルへの転換を進めているとし、具体策となるNTT東西の「光コラボレーション」などの取り組みを紹介した。光コラボレーションでは、住宅メーカーなど光回線を活用して新たな付加価値の創造を目指す異業種企業が全体の23%を占めるようになっているという。小林氏は「我々が期待していた部分、今後さらに伸びる」とする見方を示した。さらにドコモが推進しているコラボレーションモデル「+D(プラスディー)」を「言葉を変えたB2B2X」モデルと説明した。+Dのパートナー数は当初の33から1年で164になったという。
さらに小林氏はNTTグループの技術開発の取り組みをネットワーク、IoT、ビッグデータ、AI、セキュリティなどの分野に分けて紹介。ネットワークについては、まずSDN/NFV基盤上でサービスを展開できるようにし、最終的にはAPIを介してパートナー企業が網機能を活用して瞬時にサービスを提供できる「コラボレーションプラットフォーム」を2020年に向けて構築していく考えを示した。
5Gでは20~30Gbpsの超高速通信の実現だけでなく、IoT時代に求められる1平方メートルあたり100万デバイスの制御機能、1ミリ秒への低遅延化が重要な進化点だとし、360度の自由視点映像技術にも低遅延化が寄与するという見方を示した。この他、東レと共同開発した生体情報を計測するウエアラブル下着、NTTグループの共通AI基盤「corevo」、NTT研究所が取り組んでいる秘密分散・秘密計算技術の開発などが紹介された。
最後に小林氏はアメリカのアポロ計画を例に「思考回路を変えなければ実現できない、共感・感動を呼び起こせる取り組みを進めていく必要がある」とし、「NTTグループは“ムーンショット(有人月着陸のような壮大な課題)”に挑戦していく」と述べ、講演を締め括った。