Googleマップのストリートビューの元となる写真を撮影して回る通称“Googleカー”。屋根の上に360度カメラを搭載するこのクルマはすっかり有名になったが、NTTが実用化に向けて検証中の“NTTカー”は、少なくとも搭載技術については前者を凌駕している。
屋根上に高密度レーダーを備える「モービルマッピングシステム(MMS)」を搭載している
このクルマの屋根に取り付けられているのは「モービルマッピングシステム(MMS)」と呼ばれるもの。360度カメラとGPSセンサー、そして1秒間に100万点の「点群」情報を取得できる高密度レーダーだ。
左側の黒い球状のものが360度カメラ。右側の白い箱が高密度レーダー
これにより、走行しながら自動的に道路周辺の空間情報(画像と点群)を取得する。現在、土木建設業界や測量地図業界で利用が広がっているシステムで、道路の舗装面やトンネル内部の計測・点検、道路台帳や地図の作成に用いられている。
目視ではわからない電柱の傾き・たわみも自動検出
NTTはこのMMSを搭載したクルマを何に用いるのか。答えは、電柱やケーブル、支線といった架空設備の点検だ。
現在、NTT東日本と西日本が管理する電柱は全国で約1200万本もあり、5年に一度の頻度で作業員が1本1本を目視で点検している。MMS搭載車でこれを代替し、大幅に作業を効率化しようというのが狙いだ。
NTTが取り組むアクセスネットワーク関連の研究開発成果を発表する場として例年開催されているシンポジウム「つくばフォーラム2016」(2016年10月25日・26日に茨城県つくば市で開催)で、その取り組みが紹介された。
では、具体的にどのように使われるのか。MMSで取得される画像と点群情報を示したのが下の画像だ。
MMSで取得した測定結果(画像や点像、3Dモデル)と設備データ、地図を一括表示する
これは、NTTコムウェアの「データキャンバス」技術を用いたもので、360度カメラの撮影画像(上段右)、点検対象となる設備データ(上段左)、点群の描画画像(下段右)、異常箇所マップ(下段中央)、そして、マップ上で指定した電柱の3Dモデル(下段左)と、複数のデータを一括して表示する。
この画面を見ながらセンターで集中的に電柱やケーブル、支線の状態を診断し、不安全と判断された設備に絞って有スキル者が現地診断を行うことで作業を効率化する。
電柱を3Dモデル化し、傾き・たわみ等を検出する
なお、目視では認識できない数センチ程度の傾き・たわみでもMMSなら走行しながら自動的に検知が可能だ。MSS自体は市販されているもので前述のように複数の業界で利用されているが、説明員によれば、そこに測定方法やノイズ除去のアルゴリズム等の「NTTのノウハウを組み合わせる」ことで上述の仕組みを実現している。その技術は「現時点で世界一」のレベルにあるという。