シスコ八子氏に聞く「成功するIoT」の勘所――必要なのはデータを人にフィードバックする仕組み

さまざまな産業界に革命を起こすと期待されるIoTだが、そのパワーを存分に引き出すには何が必要なのか。シスコシステムズ シスココンサルティングサービス・シニアパートナーの八子知礼氏に、IoT活用の勘所を聞いた。

――IoT(Internet of Things)市場の発展には何が必要ですか。

八子 データの収集にとどまっている実態をまず変える必要があります。IoTと言うと「モノをつなげよう」という発想からスタートしますが、モノをつなぐだけでは、できることも、マーケットの規模も非常に小さくなります。それでは結局、昔のM2Mの範疇を出ないわけで、そこから上がってくるデータをどう活用するかという点にフォーカスが移ってきます。

ところが実態は、そのデータがほとんど使えていません。分析はするし、可視化もするが、例えば製造業の現場で働く人には「そんなこと前からわかってるよ」というデータにしかなっていないわけです。あるいは、BIを使って有用なデータを出したとしても、現場の忙しい人達にとって活用しやすい形になっていないケースも多いのです。それ以前に、データが貯まっていても分析されていない、そもそもデータが使える状態にないというケースも少なくありません。

目指すのはAIと人との共有――データを活用しきれていない状態こそが問題だということですね。

八子 データに基いて意思決定するのは人であり、人がデータを活用できる環境を作ることが重要です。我々はそれに対して「プロセスも自動化しましょう」と提案しています。つまり、データを人にフィードバックする仕組みが必要なのです。忙しい人でも使える形のデータにする、もしくは、人がデータを自然に活用できるような働き方にしていかなければなりません。

その部分をテクノロジーで解釈するとAIということになるのですが、ただし、なんでもAIに任せればいいということでもありません。最終的には人が判断しなくてはなりませんから、重要なのは、AIと人が共存することです。そのためにシスコは、人ももっとスマートな働き方をしようというアプローチをしています。

――それは、データやAIを業務プロセスに埋め込んでいくようなイメージで捉えれば良いでしょうか。

八子 これまでは、情報システムというかたちで別途に構築したシステムを人に使わせていました。だから、人とシステムの間に溝があり使いにくかったのですが、データやAIがシステムに埋め込まれると、システム自体がインテリジェンスを持ち、人をサポートしてくれるようになります。この場合のシステムとは、我々の既存のイメージにあるPC画面上のアプリケーションではなく、例えば机が、人が作業しようとすると油圧が自動的に調整されて動かしやすくなるといったものも含まれます。

IoTの基本的な考え方として、コスト削減や、自動制御によるリードタイムの短縮も当然あります。しかし、それだけでは従来の効率化と同じ発想を積み上げていくだけに過ぎません。現場の人達がデータを活用しようという方向には進み難いのです。

そうではなく、データを上手く活用することによって新たなビジネスモデルにシフトすることが重要です。今まで人がやっていたデータ分析をAIに任せて、そこから導き出された示唆を基に人が新しいアクションを起こし、もっと別のビジネスをやりましょうというのがシスコのIoE(Internet of Everything)の発想です。

月刊テレコミュニケーション2016年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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